ユーザー通信213号_7面:MECTの秋、ロボットの秋 ― 「欠かせない自動化、デジタル化」に来場者9万人超え
MECTの秋、ロボットの秋 ―
「欠かせない自動化、デジタル化」に来場者9万人超え
「新たなロボットマシニング」など展開
『メカトロテックジャパン(MECT)2019』が、10月23~26日にポートメッセなごや(名古屋市港区)で開催され、4日間で9万244人(国内88987人、海外1257人)が来場した。
会期初日の正午からは開会レセプションが催され、主催者代表あいさつに臨んだニュースダイジェスト社の八角秀常務(『生産財マーケティング』誌編集長)は、「9月にドイツ・ハノーバーで開催されたEMOショーでは、デジタルツールと自動化の提案が花盛りという様相だった。数年前に比べ随分と実用化が進んできた印象を受けた」としたうえで、今後の日本の製造業について、概ね、次のように見解した。
「これまでのFA業界は、極端にいえば、直接の顧客である生産技術の方々だけを見ていれば良かったのかもしれない。だが今後は、メーカーや商社が顧客の生産技術をいかに外部から多角的にサポートしていくか。設計開発、製造現場を含め視野に入れつつ、かつ、デジタル化、自動化と非常に幅広い視野を求められる。さらには、ピンポイントで個別の顧客の要求に叶う提案をしなければならない。こういった両立、責任がFA業界に課せられる時代になってきたと感じている」。
続いて出展者を代表しあいさつと乾杯の発声に立った中村留精密工業の中村健一社長は、「ものづくりにおいてはなんといっても、生産性の低さをどう打開するかが唯一の生きる道であり、そのためには自動化は欠かせない。そういった意味では、投資の面も含め、我々のやることは山ほどある。その役に立てるような業界でありたいと願っている」と追随した。
ロボット向け複合エンドミルを開発(イワタツール)
そんななか、今回の『コンセプトゾーン』では、「中小必見! ロボットで現場が変わる」をテーマに、ロボットで描く新たな生産現場の可能性として、大別すれば4つの企画展示が繰り広げられた。
このうち、愛知県のシステムインテグレーター(SIer)のトライエンジニアリングと安川電機による世界初披露の国産高剛性ロボット(MOTOMAN‐GG250)を使った切削加工システムが展示された。
実機での加工前には、トライエンジニアリングの岡丈晴部長と、今回、ロボット向け工具を開発したイワタツールの岩田昌尚社長が登壇し、掛け合いでの解説を行った。
まず、アルミの板材加工については、イワタツールがロボット用に開発した複合エンドミルにて、粗加工から仕上げ、面取り加工を1本で行った。
「従来ならコーナーラジアスなどで加工するが、抜き加工を専用にすれば、突っ込む時に頭をドリルにしたり、粗加工、仕上げ加工、さらに面取り加工も1本の工具で可能に、また、びびり対策や面取りの際の加工負荷など、ロボット用にチューニングした」と岩田社長。
また、おなじみの『トグロンハードドリル』を使い、焼き入れ鋼(SKD11・HRC60)に2・3㎜で深さ60の貫通穴をロボットで加工した。
「今後、ロボットでこういった加工が増えるというわけではないが、現時点でここまでの加工がロボットで出来るという実証実験だと見てほしい」と続けた。
小径穴あけシステム「MDS」
さらに、イワタツールが開発した小径穴あけ加工システム『MDS』(マイクロドリルシステム)については、「小径になれば、残念ながらまだ揺れの問題等があるのだが、MDSはかなり高回転のスピンドルにZ軸の動きまでをひとつのユニットに収めた。これをロボットの先端に取り付けて、加工することにより、0・3㎜の穴加工ができ、例えば、長さ2メートルの大きなワークのあちらこちらに穴をあけることにも使える」と話した。
補助作業連動「ロボットonロボット」
一方、さらにおもしろい提案として岡部長が『ロボットonロボット』にも言及。切削用ロボットの先端に付いている主軸モータの隣に小型のロボットを配置し、親ロボットの切削加工を小型ロボットが連動し補助作業を行うもので、「切粉の集塵、切削油の給油、塑性変形加工時の過熱、研磨加工時の研磨剤塗布、その他さまざまな補助作業が可能」だという。
これを受け岩田社長は、「最初にこのアイデアを聞いた時、驚きとともにすぐ思ったのがクーラントの供給だった。加工時に工具が変わると、本来はクーラントの供給位置や向きを変えたくなるものだが、マシニングセンタだと実際にはなかなか難しいことも多いし、加工途中での切削方向への給油方向を変える動きも要望したい」と課題をあげた。
最後に両者は、「ロボットがここまで加工に使えるのだと、従来の常識的な概念を覆したい」(岡部長)。「確かに剛性や精度が一般的なマシニングセンタを超えるのは難しい部分もあるかもしれないが、大物加工で精度の許容によっては、十分、現時点でも切り替え可能だと感じている」(岩田社長)と、それぞれまとめた。
2019年11月19日