ユーザー通信 209号 ②OCS関西工場 亀谷工場長インタビュー
OCS関西工場 開業1周年、亀谷工場長インタビュー
「日々、新しい発見がある」
圧倒的人気の『EgiAs』コーティングが稼働を牽引
新城本社のバッファ的役割も担う ― 月間処理目標は4万本
オーエスジーコーティングサービス(本社=愛知県新城市、彦坂光義社長)の関西工場が、この7月で開業1周年を迎えた。昨年7月と10月に設備したコーティング炉が2台、来年には3台目導入を見据え、顧客への集配車の導入準備も進めるなか、亀谷仁志工場長に、この1年間の振り返りと今後の展望を聞いた―。
関西工場は、兵庫県明石市大久保町江井島の海岸沿いに位置する。屋上からは淡路島が望め、いかだによる海苔養殖のようすも垣間見える。
開業した昨年の夏といえば、関西には連続して大型台風(20号・21号)が襲来したが、そんな「海峡の町」明石だけあって、「隣の緊急保安給水施設ポンプ室のシャッターが海の方向に向いており、20号の時にはシャッターが大きくめくり上がったり、当社では中身がカラでも60㎏ある排水タンクが飛んでいったりもした。今年もまたあんな台風が来ないかとドキドキする」と亀谷工場長は、操業早々の記憶にふれる。
そんなスタート時から変わらぬ10名体制のいま、営業は、「工場長という肩書きながら、私が担っているのは完全に営業」と、北陸から九州までをテリトリーとし、亀谷工場長が自ら奔走する。
同工場の設立は、「ここに工場を出せば、必ず何処かの仕事が出来るという見込みがあってではない」こともあり、現状、約4割の仕事は本社のバッファ的な役割も兼ねている。「こちらの仕事だけで100%固めてしまうのは非常にリスキー。2割ほどは常に本社から仕事を分担し、ファジーさを持たせている」。
根強く安定した人気の『FX』
現在、タップやエンドミル、ドリルといったストレートシャンク、スモールツールのコーティングサービスを、月間で3万5千本前後を手掛けているが、「目指すのは4万本」というなか、いま取り扱うのは、次の5膜種で膜厚3μmを限定としている。
▽TiAIN系複合多層『FX』▽Cr系『WXL』▽SiC含有耐熱強化『WXS』▽Cr系複合多層『WDⅠ(ダブルディーワン)』▽Cr、Si系ナノ周期積層『EgiAs(イージアス)』。
なかでも、中2日の納期が可能なEgiAsは、「1日に4バッチの時もある」など、この1年間での処理量の多さは圧倒的だという。
「最強を自負するEgiAsコーティングだが、他社製工具に施し新品より品質が良くなったとの話も聞く」。
また、単相から多層へと生まれ変わった第3世代のFXについても汎用性の高さから根強く、安定した人気を誇っている。
OSGは昨年のJIMTOFで、『DUROREY(デューロレイ)』等新たなコーティングを発表したが、「いまはOSG製品だけの適用だが、いずれ解禁になれば、OCSが受託加工で他社製のエンドミル・ドリル等に施すこともできるので、それらを武器に、関西工場の管轄でもシェアを取っていけるはず」。
そんななか、膜種ではダイヤモンド、DLC(ダイヤモンドライクカーボン)等、また、OSGではつくらないホブには、バリ取り、脱膜を施す装置が必要など、既設だけでは難しい設備事情等により、「まだ、関西工場ではできないこと」はあるものの、「現在のコーティング炉は2台。当工場での受注量が8割方、確保できれば、来年は3台目の炉を設備し、さらなる新規受注、なおかつ、本社の仕事もバッファで入れながら、3台をうまくやり繰りし、数字を大きくしていきたい」。
この1年の活動を、「とにかく『地道に』『ユーザー開拓』、それをやらないと・・・」と表現する亀谷工場長。「まず、関西の研磨屋さんの口座を設け、取引先を増やしていく」。伴っての、集配車の導入も準備中のようだ。
亀谷工場長は就任直前まではOSG本体(中部営業部)で活躍していたが、コーティングを生業にしてみて、「知ったかぶりではなく、工具の知識はあった方がいい。工具の会話が噛み合えば、お客様の受け答えが変わってくる」と毎日実感している。
「ただ、先述したホブやパンチ(金型)など、OSGが手掛けていない物にコーティングする知識は全くなかったので、この1年間でよく勉強になった。私にとっては日々、新しい発見がある」。
2019年7月9日