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ユーザー通信205号 1面:全国の自治体や公的機関等で「第三者承継」支援が加速

ユーザー通信 WEB版

全国の自治体や公的機関等で「第三者承継」支援が加速
~奈良県など「あとつぎ不在」による廃業をいかに防ぐか ―

時代の変わり目なので「奈良」の話をする。

日本で最も古い歴史を誇る県の奈良だが、関西のなかでも格段に人口減少と企業減少の幅が大きい地域でもある。これからわずか10年の間に、県下全企業の25%が奈良県から失われ、20年間では1/3が「消滅」すると経済産業省が推定している。

この最大の原因が「あとつぎがいない」「後継者未定」ということだ。多少大きな企業ならM&Aという方向で事業承継も可能だろうが、年商1億円以下のいわゆる「小規模事業者」では、相手を見つけることが現実的にはなかなか難しい。

日本の全事業者の8割を占める小規模事業者のうち、現時点で78%が「あとつぎがいない」という。関西のおいては、いま、少なくとも240社が後継者となる相手を探しており、奈良県では7社が該当するといったリアルな数字に出くわす機会があった(3月28日時点)。

昨今、この問題に対する解決策として注目を集めているのが、インターネットを介して後継ぎを公募する「第三者承継」というシステムであり、また、全国各地の金融機関や自治体が、M&A仲介業や各種士業の団体等と連携協定を締結し、「失敗しない、あとつぎ探し」「起業せず、事業を引き継ぐという選択肢」の体制整備、強化に取り組んでいる。

昨年だけでも、高知県、川崎市および川崎市商工会議所、千葉テレビ放送が本格的に活動を始め、このたび奈良中央信用金庫が、小規模企業向けネットマッチングサービス『Batonz』(バトンズ)との業務提携締結、県内のM&A専門家らとの連携体制の構築を発表した。

奈良県では昨年6月に「奈良県事業承継ネットワーク」を立ち上げ、行政機関、中小企業支援機関、金融機関や士業団体といったオール奈良で、事業所受け入れを支援していこうという体制ができているが、「第三者承継」となれば、同信金としても単独では提案が難しいということで、まさにこれから「本腰」を入れることになる。

奈良中央信用金庫の高田知彦理事長は、「今回の提携もM&A業務も、我々にとっては、単に手数料収入を増強させる目的は、まったく二の次であり、地域の大事な取引先が廃業の方向に向かわないように、それに伴って地域の雇用が減少しないように、より広い助成に、ぜひ有効に活かしていきたい」と述べている。

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