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トラスコ中山の現時点 ドロップシップ機能の優位性強調―もっとも合理的、スピーディーなビジネス手法(中山社長)

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第60期決算 売上高・各利益項目ともに期初計画達成

 在庫拡充を継続的に実施、機会損失防ぎ販売量増加

トラスコ中山(本社=東京都港区・大阪市西区、中山哲也社長)は2月9日、令和4年(2022年/第60期)12月期の決算発表を行い、決算説明会および記者会見をハイブリッド開催(東京本社会場/オンライン)した。

経営成績は、売上高 2464億5300万円(前年比8・6%増)、売上総利益 521億6千万円(同9・4%増)、営業利益 146億6700万円(同12・8%増)、経常利益 150億6500万円(同11・1%増)、親会社株主に帰属する当期純利益 106億2600万円(同8・4減/前年は不動産の売却を行ったため約34億円が特別利益として計上されている)。ハイライトとして、ユーザー直送やMROストッカー(究極の即納、工場への置き薬ならぬ『置き工具』)の取り組み強化により、eビジネスルートをはじめとした大手得意先の同社へのルート集約につながり、売り上げを押し上げた点や、原材料不足などから仕入れ先の減産、値上げが続く一方で、在庫拡充を継続的に実施し、販売機会の損失を防ぐことで販売量が増加した点を挙げた。

セグメント別売上高は、ファクトリールートは1706億600万円(前年比5・1%増)、eビジネスルートは515億7600万円(同16・2%増)、ホームセンタールートは221億6200万円(同20・7%増)、海外ルートは21億800万円(同24・4%増)。このうち、ファクトリールートにおいては、全国28ヶ所の物流センターおよび全国29ヶ所にある在庫保有支店による欠品対策などの在庫施策を実施し、得意先の利便性向上に努めたこと、eビジネスルートにおいては、3272社の仕入れ先との協業を基軸に約316万アイテムにおよぶ商品データベースと得意先ごとの要望に合わせた物流加工を行ったこと、こういった活動により、それぞれ売上高が増加した。

投資実績は47億9900万円(デジタル11・8億円、土地・建物28・9億円、設備7・2億円)。主な設備投資の内訳は、商品データベース「ステラ」刷新(第60期実績3・2億円)、物流センターネットワーク強化/7拠点(同1・6億円)、プラネット東関東パレット自動倉庫新築工事(同12・3億円)、大阪・堺ストックセンター新築工事(同7・2億円)、プラネット埼玉パレタライズロボット導入(同1・4億円)など。第61期は137億5500万円の投資を計画する。

プラネット愛知(北名古屋市)26年稼働へ

また、2026年7月には北名古屋市に「プラネット愛知」が稼働予定。敷地面積12595坪、延床面積27184坪、投資金額約288億円(土地約18億円・建物約170億円・設備約100億円)、在庫100万ストックキーピングユニット(SKU)、出荷能力10万行/日、出荷金額約2億円/日がその詳細となる。中山社長は、「品揃えの強化(100万SKU)と『最速』『最短』『最良』のサービスを実現するとともに高効率な物流センターを目指す」と意気込みを示した。

なお同社ではこのほど、投資計画を見える化し、成果をより確実なものとするため3か年計画を策定した。第63期(25年12月期)は3千億円を超える連結売上高、営業利益率6・6%、経常利益6・7%を計画する。引き続き在庫アイテム数、商品データの拡充、荷合わせとユーザー直送サービス、MROストッカー、26年のプラネット愛知の稼働を見据え、プラットフォーム戦略である「TRUSCO HACOBUne」(トラスコ ハコブネ)をはじめとした顧客の利便性向上につながる施策と環境負荷軽減を実現するサービスを実行し、同計画の達成を目指す。中山社長は、「3か年計画の説明直後にいうのも恐縮だが、3年後の業績なんてなかなかわからない。他社でも3か年先の数字をつくっても、本当にできるのか?と問われれば、皆、首を傾げるはず」との持論を前置きし「目標といえば一般的に数値目標が立つのだが、当社は数字より、どちらかとえば能力目標が優先するという、少し珍しい会社だ。そのために様々な投資を毎期続けているが、外部から見ると、しっかりと実績に反映するのか? といった疑問が生じるということで『やむにやまれず』3か年計画をつくった。いずれにせよひとつの目安として見てほしい」と補足した。

さらに今回はことのほか、「ネット通販企業が物流センターを強化すると、 トラスコの役割と売上はダウンするという仮説の誤解」を次のように強調した。

――もっともらしく聞こえる仮説ではあるが、現実は仮説に反し2桁の成長を続けている(※eビジネスルート売上高推移=21年443億円→22年515億円)。その理由は、自社物流センターを介さず、納入業者にドロップシップで発送したほうがコストダウンにつながるからである。できる限り商品にさわる回数を減らすことがコストダウンへの早道となる。自社在庫を活用するとなると、商品の発注→入荷商品の荷受け→梱包の開封作業→数量確認→入荷検収→ゾーン別仕分け→倉庫内搬送→格納作業→受注ピッキング作業→検品作業→倉庫内搬送→荷合わせ作業→伝票封入作業→梱包作業→送り状貼付作業→出荷方面別仕分け作業→カゴ台車への積込作業→トラックへの積込作業→出荷、これらの作業以外にも、納品書の管理、請求書確認作業、支払作業も加わる。以上のようなことから、 ネット通販企業は、受注データをドロップシップ可能な企業に発注することが、もっとも合理的でスピーディーなビジネス手法となる。巨大物流センターの構築は、ドロップシップ機能を持たない、持てないメーカー、問屋のためのセンターであると認識するべきである。もちろん、受注頻度の高い商品は在庫対応されている――

▲環境負荷軽減の取組み商品「ノンガススプレー」をPRする中山社長(PC画面のスクリーンショット)

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