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東陽の現時点 /経営報告会で新社長披露 世界一の会社になろう「世界でいちばん使いやすい商社」へ

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「今まで以上により魅力的な提案営業を」(羽賀威一郎社長)

 「万全の財務体質で臨む」(羽賀昭雄会長)

国内有数の機械工具ディーラー、東陽(本社=愛知県刈谷市)の経営報告会が2月24日午前11時より名古屋観光ホテル(名古屋市中区)で開催され、主要仕入れ先メーカー、関係者らが参集し、1月9日付就任した羽賀威一郎社長(55)披露の場となった。

同社は昨年10月に羽賀象二郎前社長が急逝。経営報告会およびその前段として10時から行われた報道向け記者会見で羽賀昭雄会長は、「まさかのまさか、かえすがえすも残念・・・私の二男である東陽の社長を働き盛りの52歳で失い、一切そんなことは考えていなかったので、当面どうしてよいのか非常に苦悩した」。羽賀新社長は、「私の実弟、衝撃的だった。第一報を受けた時は悪い冗談だと思い、全く現実感が沸かなかった。東陽の社員も皆、少なからず動揺していた。私の存在が単に『社長のお兄さん』としか認識されていない中『とにかく心配しないでくれ、これまで信じてやってきたことを、そのまま信じて続けてほしい』が社員へ向けた第一声だった」と、あらためて、それぞれ前社長への鎮魂の思いを語った。

経営報告で最初にあいさつに立った羽賀会長は、新社長の指名が前社長逝去から2ヶ月以上経過した今年1月9日の取締役会となったことについて、「その間も私は安心していた。それは私自身、当社はあくまでも、例え売上高1千億円を超えようとも中小企業だと思っているので、中小企業的な財務分析という前提ではあるが、財務状況は98・4(100点満点中)という万全の財務体質であり、少々新社長の就任が遅れても、いちばん良い社長、社員がいちばん動揺しない社長を選びたいという思いがあり、時間をかけた。日本の過酷な税制のもとで前社長が考え抜いて安定した基盤にしてくれた」と説明。また、「10年単位で常々考えていること」として、売上高が1500億円を超えた2017年当時の項目を挙げ、「2027年 売上高20億ドル(当時レート概算で2千億円)」「世界中に10ヶ所の拠点新設」「M&Aで新規分野の開拓」「チームワークで組織的に動く」とあらためて顧みた。そんな中、10年先の会社運営、姿について新社長と語り合ったのが「世界一の会社になろう」。これは「売上高や利益のことではなく『お客様にとって世界でいちばん使いやすい会社』が東陽であるということ。お客様の分身となって、本当に役に立つ会社、頼りになる会社になろう、が今後の我々流通業者の生きる道だろう」と説き、「東陽はより一層、皆さまの商品販売に世界で最も使いやすい商社として、新社長の今後の方針、考え方を披露させていただき、ご賛同いただきたいと思う」と結び、新社長のあいさつへと繋いだ。

新社長の羽賀威一郎氏は昭和43(1968)年生まれ。略歴は、平成4(1992)年ボストン大学経営学部卒。平成5(1993)年丸紅入社。平成15(2003)年東陽グループ会社・東陽フットウエアー(現・TOSMAX)入社。平成17(2005)年TOSMAX社長就任。平成21(2009)年日本ラボテック社長就任。平成26(2014)年東陽IDDセンター代表取締役就任。「総合商社時代は長年にわたりエネルギー部門に所属し、中東・カタールから液化天然ガス(LNG)を日本の電力会社に供給するプロジェクトに携わっていた。TOSMAXは靴の輸入業者で、お客様の本社のみならず多くの店舗にも足しげく通い、幅広く接し『何を求めているのか、何に困っているのか、何をめんどうくさいと思っているのか』に注目し、一つひとつの課題を片付けることで、お客様との関係を徐々に固いものにもっていけたと思っている」と自身の経歴にふれた。そして東陽社長に就任した今年、年始に東京で開催された日工販や日工会の新年賀詞交歓会に参加し、「2022年度の工作機械受注額が1兆7千5百億円見込みだと聞き、産業規模の底堅さを再認識した」という。現在、顧客へのあいさつ回りに奔走する中、主たる自動車産業においては、「半導体の供給に関しても、今年後半には安定するという見通しを各社持っており、条件付きながらもトヨタ自動車は年間生産台数を過去最大となる1060万台に設定するなど、回復の兆しは徐々に見えていると考えてよいのではないか。一方では、EVに向けた投資も23年度より、いよいよ本格化するのでは」と見解する。その上で、「市場のニーズは日々刻々と変化しており、専門性も高まっている。そのようなニーズに柔軟に対応していくには、今回ご参集いただいたお取引先各位の協力が必要不可欠。当社はお客様のニーズを商社としていち早く的確に把握した上で、皆さまのもつ技術的なサポートや洗練されたノウハウを組み入れ、今まで以上に、より魅力的な提案営業を行っていきたい」との取り組み姿勢を示した。

単体売上高1千億円目指す(24年3月期)/6月に滋賀営業所(栗東)オープン

続いて、近藤裕二副社長が、23年経営概況について、概ね次の内容を説明した。23年3月期の機械工具販売単体の売上高は前年度並みの1千億円に若干届かない程度の着地見込み。工具の売り上げが思いのほか堅調。連結売上高では1千2百億円を若干上回る見込み。工作機械の純売上が年々減少気味の中、逆にロボット需要や自動化ニーズの高さにより産業機械の純売上が上昇傾向である。現在国内拠点は北海道から九州まで全国19ヶ所あり、新たに今年6月に滋賀営業所を栗東にオープン予定。そのほか、直近2年間に新設した海外拠点、各国の自動車販売台数等に言及し、「24年3月期は今期(23年度)並みを予想するが、とにかく単体で売上高1千億円を目指したい」と参集者へ協力を呼びかけた。

総会終了後は懇親会が催され、タンガロイの木下聡社長が「東陽様が力強く宣言された『世界一の対応力』で難局を乗り切る」旨あいさつし、乾杯発声の音頭をとった。会場では、羽賀新社長が各テーブルにあいさつに回り記念撮影に臨むなど終始和やかなムードで会は進行。中締めではスギノマシンの杉野良暁社長が「カーボンニュートラルや自動化ニーズなど、工作機械関連業界は間違いなくこれからも成長だと思っている」旨あいさつし、三本締めで散会した。

 

▲記者会見での羽賀威一郎社長        ▲経営報告会で羽賀昭雄会長は「前社長は緻密、新波長はおもしろい男」と評した

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