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ユーザー通信 248号 5面 : 大機器協 新神戸で社会見学会実施 「竹中大工道具館」見学、「デザイナートークセッション」聴講

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「世界の潮流は木造建築」「ブランドとは完成価値」等知見得る

大阪機械器具卸商協同組合(大機器協/中山哲也理事長=トラスコ中山社長)は12月7日、組合活動の社会見学会(木村吾郎社会見学委員会委員長=カツヤマキカイ社長)を実施し、組合員、メーカー会員ら71名が参加した。

大機器協一行は、集合場所の山陽新幹線・新神戸駅より2グループに分かれて、最初に、新神戸駅から徒歩約3分の「竹中大工道具館」に移動し、「竹中工務店の木造・木質建築」等の取り組みについて説明を受けたあと、各自で館内を自由見学した。竹中工務店は、織田信長の普請奉行、竹中藤兵衛正高を始祖とし、創業400年を超え事業を行っている大手ゼネコンであることはいうまでもないが、近年は、森とまちをつなぎ、人々の社会生活に森を取り込む「森林グランドサイクルⓇ」の構築を進めていることから、プレゼンテーションでは、概ね、次の内容が語られた。

「木造建築はいま、世界の潮流である。欧米にはウッドファーストという言葉があり、鉄やコンクリートに代わり、まず初めに木材を使えないかといった考えがある。その背景にはサステナブル社会の実現、気候変動への対策、そして脱炭素社会がある。森林はCO2を吸収して、木は切って使いCO2を固定化することができる。循環型資源の木材を利用することはサステナブル社会の実現には欠かせず、さらにはSDGs(持続可能な開発目標)、ESG投資(社会的責任投資)の時代が到来している」。「一方、技術開発が進み、CLTという木材が1990年代後半にスイス、オーストリアなど欧州で開発された。それにより世界で大規模な高層木造建築が手掛けられている。CLTとは直交集成板という意味。繊維方向が直交するように積層接着したパネルで建物の床や壁に利用することが有効である」。「そんな中、関西では2025年開催予定の大阪・関西万博は『木造万博』ともいわれ、多くのパビリオンが木造建築になり、リングと呼ばれる直径約600m、全長約2㎞の大屋根が木造化される予定」。

そして見学終了後は、新神戸駅直結のANAクラウンホテル神戸へ移動し、柳原照弘氏、倉本仁氏、両デザイナーによるトークセッションを約1時間聴講した。この中で、主に柳原氏から発せられた「ブランド」に対する考え方とは、概ね、次の通り。

「ブランドとは完成価値。無形だがブランドとは信頼でもあり、皆が憧れるもの、人の心を刺激する活動であり、感性を忘れてはいけない」。「ブランドとは人格そのものである。人格で例える、ということは、すごくシンプルであり、あまり難しく感じなくてよい、ということ」。「独りよがりになってはいけない。受け手のこともしっかり考えながら、自分の会社、社員をブランディングしていく時に『受け手はどうなのだろう? どう感じるのだろう』という気遣いを忘れずに行うことが非常に大事だと思う」。

トークセッション終了後は、柳原氏、倉本氏も加わった交流会が開かれた。中山理事長は、「例えば、発売当時の新車(自動車)が30年ほど経つと古臭く見えるのはなぜか? の答えが未だに出せていないので、教示いただこうと思う」と、「デザインの不思議」を両氏に投げかけ、あいさつの一端とした。さらに、最初に訪れた竹中大工道具館の見学にちなみ、「建物は設計が120%である。いくら良い施工をしてもダメな設計では使い勝手が悪いということ。建築計画があれば夜な夜な建築図面を穴があくほど見ることが良い結果を呼ぶ」とも述べた。また、中締めあいさつに立った大機器協の古里龍平副理事長(ジーネット社長)は、自社(フルサト・マルカホールディングス)の新ブランド(UNISOL/ユニソル)制定が、直近にあったばかりだったことにもなぞらえ、「皆が右に倣え、で育った我々世代には、クリエイティブな、何か自分個々を表現することは絶対に無理、そういう発想にならない、と痛感した。そういうことは若い世代に考えてもらうのが正解だ」と苦笑気味に述べ、3本締めで散会した。

▲選りすぐりの資料約1,000点や迫力の実物大模型を7コーナーで展示する日本唯一の大工道具館を見学

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