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ユーザー通信230号 4面 トラスコ中山 取引商品の「プロツール限定」を解除

ユーザー通信 WEB版

トラスコ中山

取引商品の「プロツール限定」を解除


「今後ターニングポイントになるであろう意思決定」(中山社長)

株主総会で経緯語る
「家電メーカーに変貌」したアイリスオーヤマ事例引き合いに

3月18日、東京・大阪の両ホテルニューオータニで、トラスコ中山(本社=東京都港区、大阪市西区)の定時株主総会(第58期=令和2年12月期)が開かれ、記者は議長出席会場の大阪に出席した。

今回、株主にとって最大の関心事、注目は、どうしても「株主優待制度の廃止」に終始した感が否めなかった。

だが、記者にとって最大の関心事、注目となったのが、取扱商品の『プロツール限定の解除』への言及だった。事業報告や数々の年間ダイジェスト報告の中で、中山哲也社長はこれを、「営業上で今後、ターニングポイントになるであろう意思決定を行った」と強調した。

かつて同社は、「売れるものは、なんでも売る」という経営スタイルであったが、約20年前に、「本業の強いところを、さらに強くして伸ばす」とし、「工場(製造業)で必要とされる物しか売らない」と決断した。

このように、当時年間売り上げが約100億円を超えていた本業外商品の取り扱いを中止した経緯がある。

この決定により、「会社は随分スムーズに回るようになり、現在まで特に問題なく推移」してきたが、「ところが最近、問題が浮上してきた」という。

その最も理解しやすい事例として、仕入先メーカーのアイリスオーヤマの名を挙げた。アイリスオーヤマは元々、プラスチック製収納用品のメーカーとして取引していたが、周知のとおり昨今では、家電メーカーへと変貌を遂げている。

「アイリスオーヤマのエアコンは取り扱えるのか?取り扱えないのか?」といった混乱が生じている上、売れ筋商品を連発するアイリスオーヤマは、ネット通販も拡大している。

「業種、業界の垣根が取り払われた今、プロツール限定を解除する時が来たのではないか」と中山社長は考えた。

これは決して無秩序に解除するのではなく、まずは従来取引のある仕入れメーカーの商品から販売を開始する。これにより顧客(販売店)の利便性も向上し、ユーザーニーズに寄与する機会も増えると思われるが、中山社長は「当社の業績にどのようなメリットがあるのかは、まだ試算できていない」としながらも、「これからの推移に注目してほしい」と疑問を持たず述べた。

そんなトラスコ中山では早速、3月15日付で、今期(第59期=令和3年12月期)連結業績予想の上方修正(売上高2275億円/前年比6・6%増、営業利益131億円/同19・6%増等)を行った。

「当初策定時期が昨年12月だったが、今年に入り景気全体の持ち直しが見られ、設備投資も徐々に回復基調にあることが理由。決して力強い上昇気流ではないが、在庫の力、物流の力、デジタルの力、社員の力を結集し、業績向上に努めたい」。

物流設備やデジタルへ投資継続

なお、冒頭にふれた株主優待制度廃止による優待商品費用3億円については、「I‐Pack」(アイパック)=物流センターでの高速自動梱包ラインなど物流設備や情報システム(デジタル)へ投資を継続することにより、企業として「ありたい姿の実現」に向け取り組む姿勢を強く示し、理解を求めた。

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