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ユーザー通信213号_5面:日本機械工具工業会 秋季総会 藤井裕幸氏(元、サンドビック社長)らが業界功労賞受賞

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日本機械工具工業会 秋季総会

藤井裕幸氏(元、サンドビック社長)らが業界功労賞受賞

生産額見通しは5014億円に下方修正

 

10月9日、都内のアーバンネット大手町ビル・東京會舘で開かれた日本機械工具工業会(石川則男会長=オーエスジー社長/以下、JTA)の令和元年度秋季総会では、業界功労賞、技術功績賞、環境賞の表彰式が執り行われた。受賞者・社はそれぞれ次のとおり。

【業界功労賞】

▽中河清氏(元、不二越常務)▽藤井裕幸氏(元、サンドビック社長)。

【技術功績賞】

①技術功績大賞 Silent Tools プラスの開発=サンドビック。

②技術功績賞 ▽アルミ加工用Tung Speed Millの開発=タンガロイ▽ハイパー Z スパイラルタップ チタン合金用の開発=不二越。

③技術奨励賞 ▽低嵩炭化タングステン(WC)粉末の開発=アライドマテリアル▽アルミニウム合金加工用高能率カッタANX型の開発=住友電工ハードメタル▽溝入れ突切りバイトGWシリーズの開発=三菱マテリアル。

【環境賞】

①環境大賞=日本特殊陶業②環境特別賞=東陽。

このうち、業界功労賞を受賞した藤井氏は、平成12年6月より旧・超硬工具協会理事に就任以来、16年の長きにわたり役員を務めた。
藤井氏は平成21年6月に倉阪克秀理事長(当時)により新設された国際関係対策常任理事に就任し、平成25(2013)年5月にアジアでは初めての開催となった京都での世界切削工具会議(WCTC)では実行委員長として、「匠とおもてなし」を掲げ企画運営を主導、成功裏に終えた手腕は各国から称賛され、特筆されるべきものだった。

「夢中で歩んだマシンツール人生」(藤井氏)

受賞あいさつに立った藤井氏はWCTC京都会合を、「人生で大きな経験となり、一生忘れられない思い出となった」と述懐し、会期中のハプニングやエピソードを交えながら、「夢中で仕事をし、気が付けば今年、古希を迎え、このような名誉ある賞をいただき、驚きとともに心からの感謝を申し上げたい。工作機械で30年、工具で17年と、まさに『マシンツール人生』を歩んできて本当に良かった」と述べた。
そんな藤井氏は現在、さまざまな業種の顧問やコンサルタントとして現役を続けるなかで気が付いたこととして、伸びる会社とそうでない会社の違いを、「設備でもなく、人でもなく、その会社が『どこまで極めたか』によって差がつく気がする」と説いた。

その例として、リッツカールトンホテルで語り継がれるという「99℃と100℃の差」を引き合いに出し、「99℃までは単なるお湯に過ぎないが、100度になれば沸騰して蒸気となり、とてつもない力を発揮する。この『差』だ。その意味では日本企業・日本人は、世界で100℃をめざせるポテンシャルのある企業集団だと思う」と続けた。

◇  ◇  ◇

またJTAは、正会員への生産品目ごとのアンケート調査結果による、令和元年度生産額の改訂見通しを発表した。

上期は2478億円(対前年同期比2・7%減)、下期は2536億円(同4・0%減)、通期では5014億円(同3・4%減)と、当初の5078億円に対し64億円減となる下方修正をした。

これは2015年に超硬工具業界と日本工具工業会が統合しJTAの発足後、初めてのマイナス見通しともなった。その理由としては、長期化する米中貿易摩擦と伴っての中国経済の減速等により、下期の不透明感がますます強まっていることが挙げられる。

内訳は、特殊鋼工具が969億円(前年同期比0・8%減)、超硬工具が3378億円(同3・7%減)、ダイヤモンド・CBN工具が280億円(同6・2%減)。

主な品目別の前年比では、ねじ加工工具の3・1%増、鋸刃カッタが0・3%増のほかは、ドリル0・5%減、エンドミル4・7%減、カッタ4・6%減、バイト7・3%減、リーマ1・9%減、インサート5・2%減など軒並みマイナスとなっている。

DI値が全項目で悪化示す回答増加

なお、同時に行った会員向け調査によれば、10月~来年3月のDI値(景気動向指数)は、生産額の先行き見通し、内需の業種別水準(自動車関連・航空機関連・一般機械向け)、外需地域別の水準(アジア向け、欧州向け、北米向け)といった全ての項目でマイナス(悪化)を示す回答が増えている。

製品・サービスに日本流の拘りを(石川会長)

そんななか、総会に続く懇親会の冒頭で石川会長は、自身も1試合観戦に出向いたというラグビーワールドカップの話題になぞらえ、次のようにあいさつした。

「日本代表は、さまざまな国籍、民族、人種が交わり合うなかで、あれだけ世界とわたりあえるチームをつくっている。民族や人種に拘わりなく、世界で活躍できる企業を目指すうえで拘わるのは、日本流の製品に対する熱い思いであり、サービスの向上である。世界経済が下降気味ではあるが、このような気概をもってJTAの発展に尽くしていきたい」。

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