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ユーザー通信213号_4面:「全機工連 大阪大会」に540人が結集 「働き方改革もAIもこれからは欠かせない経営課題」(大機器協 中山理事長)

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3年毎に開催される全日本機械工具商連合会(全機工連/会長=坂井俊司NaITO社長)の第43回全国大会が、10月16日にホテルニューオータニ大阪で開催された。

北は札幌機工商業会から、南は福岡機械工具商組合に至る全国の流通関係者を中心に、会員、賛助会員およびメーカー会員ほか関係者ら総勢540人が参加した。

なお、9月9日に関東地方を襲った台風15号、同じく関東・甲信越、東北地方に甚大な被害をもたらせた台風19号の影響により、本来出席予定だった茨城機工会ほか欠席を余儀なくされる会員も一部見受けられた。

今回は、「はじめよう令和の新しい働き方~AI時代を生き抜く機械工具商のあり方~」をテーマとし、働き方改革とAI(人口知能)を題材としたダブルメインの講演会が実施された。

最初の講演、SCSK㈱の谷原徹社長による『やって得する働き方改革』では、同社が属するIT業界のイメージには、「きつい、帰れない、厳しい」の3Kに始まり、「規則が厳しい、休暇が取れない、化粧が乗らない、結婚できない」といった7K、さらには「きりがない、休憩が取れない、子供ができない、心が病む・・・」等の24Kまであるといった話を口火に、同社での主な取り組みを紹介した。

「浮いた残業代を社員に全額還元」といった施策や育児関係支援策、女性ライン職育成、シニア正社員制度、「健康わくわくマイレージ」では良い行動習慣と健康診断結果をポイント化(年間獲得)しインセンティブを支給、自席を前提としない「どこでもWORK」等、働きやすい職場作りに向けた意識改革と改善活動定着化など。

続いての講演、SAPジャパンの福田譲社長による『知って得するAI事情』(人工知能)では、概ね、「AIは魔法ではない。世の中にパターンのある限り、パターンの発見→検証→体系化により、先が読めるようになる」が説かれた。

これら講演は両者による対談を含め約2時間半にわたり展開されたが、式典冒頭での全機工連の坂井会長あいさつに続く、大機器協の中山哲也理事長(トラスコ中山社長)による主催者組合あいさつの時点で、ある意味、すでに要点は「集約」されていたといえる。

中山理事長はまず台風被害にふれ、「私たちの業界はものづくりを応援するだけではなく、社会のインフラを復旧、復興する役目も果たさなければならない。ぜひ業界をあげて被災地の復興を成し遂げていきたい」と述べたあと、大会テーマについて、こう言及した。

「働き方改革を怠ると社員が採用できない、社員が定着しない、そうなると会社の存続にも関わってくる。働き方改革で最も重要なのは業務改革、つまり、無駄な仕事を切ってしまうこと。やめるものもやめなくて働き方改革などあり得ないと思う」。

その事例として、自虐的に「当社はかつて、漆黒、暗黒企業が定評の会社だったが・・・」と前置きしたうえで、「一昨年にホワイト企業との認定をいただいた。時間外労働の大幅な減少に起因するのだが、その一番の要因は、実は、在庫量を増やすことだった」と示した。

「在庫があるから取り寄せが少ない、ということで非常に手間が減り、大幅な業務改善につながった。一般的には、在庫は少なければ少ないほうが良いといわれるが、逆に増やすことにより、大幅な時間外労働の削減につながった」という。

また、納品書と請求書の突合作業をやめたことにより、「メーカー様から請求書をいただかない会社」としてすでに20年以上が経過しているとも付け加えた。

一方、AIについては「人工知能とは全て過去のデータの蓄積から生み出される予測能力であり、経験、習慣、知識をデータ化し、人間が起こす勘違いや思い違いをせず、忘れることなく、そのデータを有して役立てていく」とし、身近な例として携帯電話の文字打ちにおける予測変換での例をユニークに話した。

「働き方改革もAIも、どちらにせよ、これからの経営には欠かせない課題だろう。取り組む場合のポイントは2つ」として、中山理事長がさまざまな場で提唱している「やめる経営戦略」をあげた。

「経営戦略といえば足し算のイメージがあるが『働き方改革は業務改革』であり、やめるべきものは拙速にやめていく作業をしていかなければ、何もできない。必要と思っている仕事でも約半分は本当に必要なのかどうかわからない仕事が多々あると思う。思い切った業務の刷新がターニングポイントになり得る」。
2つ目は、「会社を良くする」とは「悪いことをなくす」こと。
「良くするために、あれをしよう、これをしようと考える人が多いが、忘れてはならないのは、悪いところをなくしていく作業をしていかなければ、良いことをしても、悪いことが残っていれば帳消しになってしまう」と続けた。

プログラムでは他に、全機工連功労者表彰(大阪・河田徹氏〔河田機工会長〕ほか3名)、森一産業の渡辺喜弘社長より、働き方改革についての組合アンケートの分析結果発表、ブロードリーフの山中健一副社長による機械工具商向け販売管理システム『機工メイト』の展開が紹介された。

次回開催地は愛知(2022年)

なお懇親会では、大機器協・中山理事長から、次回開催地である愛知県機械工具商業協同組合の水谷隆彦理事長へ組合旗引継ぎが行われた。

水谷理事長は、「旗の重さとともに責任の重さを痛感している。3年後がどんな時代になっているかわからないが、ぜひ楽しみにしていただきたい」と呼びかけるとともに、来年2月に三重・四日市で開かれる第2回「全機工連若手交流会」に関連し、中部ブロック4地区(三重、岐阜、遠州、愛知)の青年部メンバーを急遽、壇上に招き、各自紹介の機会を与えるなど、盛り立てた。

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