[263F]OSG株主総会 今期「売上高1,530億円、過去最高の営業利益230億円めざす」 成長分野での販路拡大に注力 人財循環の新体制で企業価値向上を推進
オーエスジー(本社=愛知県豊川市)は2月16日、愛知県豊橋市のホテルアソシア豊橋にて「第111回定時株主総会」を開催した。当日出席者数は93名(株主+オーエスジー役員)。
はじめに、議長を務める石川則男会長が挨拶に立ち、年頭に景気停滞が懸念される中国を視察訪問した際のエピソードを紹介。「欧米人の姿がほとんど見られず、海外からの投資や人の交流が滞っているとの印象で、市況を見てもデフレの匂い(予兆)が感じられた。しかし、経済の底も見え始めたとの声も多く聞かれた」と回復への期待を述べた。次いで、議事の進行に移り、2023年11月期の同社の事業活動について、VTR上映も交えながら報告した。
中国経済の停滞やウクライナ情勢などの地政学リスクの懸念が高まる中、同社グループは米州および欧州市場は堅調に推移したものの、中国、台湾を中心としたアジア圏および日本は厳しい状況が続くなど、「地域によって、明暗が分かれた」と説明。2023年11月期連結業績は、売上高が1,477億3百万円(前期比3・6%増)、営業利益が198億円(同9・6%減)、経常利益が213億5千万円(同9・7%減)、当期純利益が143億7百万円(同13・5%減)となり、「欧米がけん引し、過去最高の売上高を達成したが、一方で中華圏の停滞が続き減益に。海外売上高比率については、円安の追い風もあり、前期と比較して増加し、67%(前期は64・9%)となった」と報告した。
今後の見通しについては、先行きへの不透明感はあるものの、海外市場でのシェアアップを最重要課題とし、グローバル市場でのユーザー開拓と「Aブランド製品戦略」を推進することで、一層の成長を目指す。22年11月期よりスタートした中期経営計画にて、収益性および事業効率の改善により強固な企業体質をつくり、主力の自動車関連産業、航空機関連産業のみならず、半導体・5G、ロボット・自動化関連・機械部品、モビリティ(EV)、医療機器部品など、成長が見込まれる微細精密加工市場での販路拡大と顧客拡大への取り組みをアピールした。
24年11月期の業績予想は、連結売上高は前期比3・6%増の1,530億円、営業利益は同16・2%増で過去最高となる230億円、経常利益は同7・7%増の230億円、当期純利益は同8・3%増の155億円を目標とした。なお、決議事項である、第1号~第4号議案の各件は原案通り承認された。
多くのワーキンググループの活動推進が成果を上げている/大沢社長
株主総会終了後は、引き続き懇談会が行われ、最初に、大沢社長が中長期的な経営環境での同社の経営方針を説明した。「自動車産業のゲームチェンジ」とのタイトルを掲げ、大変革の最中にある自動車業界の最新動向を説明。中国BYDの猛進が続くEV市場について、「中国攻勢への警戒や不安定な充電インフラ環境などを背景に、補助金の停止・縮小など、欧米ではEV普及への減速感が表面化している」と直近の市場動向を分析した上で、「EVの市場シェアは最大で3割。残りの7割はHVなどで、エンジン車は必ず残る」とのトヨタ自動車・豊田章男会長の予測を紹介。さらに、航空機市場では小型・中型機はすでにコロナ前を超える水準に回復しており、ボーイング社は今後20年間で新造機需要を約4,300機と予測している等の市場動向を示し、「カーボンニュートラル時代に向けて、世界のモノづくり産業に貢献するエッセンシャル・プレーヤーとしての役割を果たしていく」との方針を示した。
また、「中期経営計画での主要課題であったグローバル市場でのシェア拡大と新たな成長市場である微細精密加工向けの売上拡大、収益性改善なども、部門を超えて発足した多くのワーキンググループの活動を推進し、成果を上げている」と力説。微細精密加工向けの販路拡大の具体策として、医療機器部品関連の顧客先に自販機を設置し、販売から在庫管理まで展開する「自販機ビジネス」を展開し、業績を大幅に向上しているアイルランドのグループ会社(FLATLEY社)の事業展開を披露し、「M&Aから7年間で売上2・6倍、営業利益7・5倍と逞しく成長した。こうした成功事例を世界中に横展開してシナジー効果を活用していく」と強調した。最後に、地域貢献への事業活動や、人的資本の活用を目的に「リソースマネージメントセンター」を昨年12月に設置したことを明らかにし、企業経営への理解と支援を求めた。
「言える化」「聴ける化」「見える化」の実践が重要/安形リソースマネージメントセンター長
次いで、「中期経営目標達成のための体制変更、施策」をテーマに、安形幸治執行役員リソースマネージメントセンター長・人事総務部長から、新設の「リソースマネージメントセンター」の目的を説明。同センターは人事総務部、経理室、調達部を統括し、3部門の経営資源の最適・最大活用と適正管理を目的に新設。具体的には、組織の垣根を取り払い、専門性を深化する縦割り組織に、横へ拡がる組織力を加えることで、「人財の循環による組織の変化に伴い、新たな目線による気づき(チャンス)、違和感から生まれる進化(チェンジ)、リソース(情報・知識)の活用/蓄積(チャレンジ)による社員個々の変革への対応力とスキルアップを推進する」とした。さらに、人財が育つ・能力が発揮できる風通しの良い、やりがいを感じる組織の実現には、言うべきことを言える信頼関係による「言える化」や、新たな発想や異なる意見を容認する「聴ける化」、目標や課題、成果を共有する「見える化」の実践が重要と指摘。「企業と社員の輝く成長に繋げていく」と話した。
伸びゆくインド市場で強力な販売力を展開/米田上席執行役員
最後に、南アジアおよび中近東を担当する米田能崇上席執行役員より、成長市場であるインドでの戦略について、取り組み状況を報告。「現在、インド国内には3つの生産拠点でタップやドリル、エンドミル等を生産し、100社以上の販売網と直販ルートで拡販活動を展開し、各地の現地顧客との信頼関係を構築している。将来的には、現地法人2社の年間売上高として、『OSG INDIAで50億円、CCTで20億円を達成することが夢』」との抱負を述べ、締めくくった。
▲株主総会議長を務めた石川会長 ▲株主懇談会での大沢社長
▲質疑に応答中の石川会長(左)と大沢社長 ▲懇談会でインド市場を語る米田上席執行役員
2024年3月1日