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三菱電機グループ全技競 伊丹製作所で「旋盤」競技を開催

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グループにおける技能向上・伝承の象徴的施策 「選手とコーチがペア」で競う

三菱電機(本社=東京都千代田区丸の内)が「伝承と技術水準の一層の向上」「現場重視・技能尊重の風土醸成」「トップレベルの技能者育成」を目的に、1977年より開催している「三菱電機グループ技能競技大会」が今年で46回目を迎えた。

三菱電機の全国に所在する製作所ごとに開催する予選に、概ね84職種・1207名の選手が参加し、決勝戦の位置づけとなる全社大会には10職種・102名が出場した。

全社大会のうち、電子通信システム製作所/伊丹製作所(兵庫県尼崎市塚口本町)の実習場では「旋盤」競技(実技+学科)が10月22日に実施され、同社全国の製作所から選出された20代前半の若手を中心とした10名の選手が参加し競技(実技)に臨んだ。

精度±0・02―0・03㎜での加工技能を競う 4時間で3つの部品を加工し組合せ完成品に

回転させた金属材料に刃物等の工具をあて「削り」「穴あけ」「切断」などの加工を行う旋盤職種の課題では、コピー用紙の厚さ(約0・08㎜)よりも精密な±0・02㎜-0・03㎜の精度での加工技能が求められるため、正確な寸法の把握や要求精度に仕上げる機械の取り扱いが求められる。

そんな中での課題概要は、合金である「炭素鋼」を材料とし、3部品を作製し、1つの部品に組み立てを行う。実技の制限時間は4時間としており、冒頭の30分程度が報道陣に公開され、競技開始前の緊張感漂う静かな空気の中から、スタートの合図と共に一斉に猛スピードで動きだし、匠の技を繰り出す選手たちの姿が見どころの一つとなった。

報道陣には見学に先立ち、全技競(三菱電機グループ技能競技大会)の全体像が、同社人事部人材開発センターものづくり教室長の松本泰典氏から語れられた。

三菱電機は今年度(2025年)より、リスクを恐れず、自由な発想で価値を創出する「イノベーティブカンパニー」への変革を目指しており、この中では、新たな価値の創出に向けて「コンポーネント×デジタル両輪の成長への集中投資」を掲げている。

昨年度まではなかったコンポーネントという言葉が、今年からトップに入ったことを、三菱電機の漆間啓社長曰く「あなたたちがつくってる製品そのものなんだ」と言い換え、技能系社員に向けて話しているという。松本氏は、「変革の最上段にあるのが『あなたたちのものづくりが一番大事』を伝えているのが私の仕事」だと自身の役割にふれ、大会の概要説明に入った。

全技競には、次の10職種がある。①精密仕上げ(名古屋・10月)②配電盤組立(丸亀・10月)③品質検査(長岡京・10月)④メカトロニクス(静岡・10月)⑤旋盤(伊丹・10月)⑥構造物(伊丹・11月)⑦ろう付(和歌山・11月)⑧マシニングセンタ(姫路・11月)⑨機器組立(福山・11月)⑩電子機器組立(鎌倉・11月)。

当日に至るまでに4つの職種を終えており、旋盤は5番目の大会となる。第1回は昭和52年、2003年以降職種を暫次増加し、17~19年度は11職種・120名超、20・21年度はコロナ禍により中止となったが、22年に3年ぶりの大会を開催し「競技は各開催製作所に集合して行えたが、開会式だけはオンラインとなった」

そして今年度(25年)は、前述のとおり10職種・102名の参加者は49・5%(50名)が初参加、全体の平均年齢は25・1歳、所属比率は同社社員が68・6%(70名)・関係会社社員が31・4%(32名)となった。

選手とコーチの間柄に涙腺緩む・・・・

大会の目的について「技能を育成し、強化し、伝承する、ここを非常に重要視している」と松本氏。「今回の見学でもその様子が伺えると思うが、競技する選手にはコーチが必ず後ろ、もしくは横で心配そうな顔をして付いている。この『選手とコーチの間柄』こそが、まさに『伝承』だと、私も見ていて涙出そうになるくらい、2人の『絆』があり、やはりここで、実際に、技能が伝承されているのだと、いつも感じる」

このように、三菱電機グループの技能競技大会は今後も継続しながら、技能を伝承しつつレベルアップに寄与する大会になっている。

続いて、運営委員が、課題である3つの部品を組み合わせた完成品を示し、「完成までに制限時間は4時間であり、延長時間はなく、その時点で終わっていなければ、そこで打ち切り」とのルールを説明した。

さらに、組み合せの実演を交えながら「3つの部品それぞれに寸法精度があり、一個一個寸法を決めて加工していき、最終的には3つを組み立てた後も同じように寸法の精度が決まっている。厳しいところでは、0・02㎜~0・03㎜レベルの寸法精度の範囲を設定している」と続けた。

これらを受けた質疑応答の中では「三菱電機内での自動化ではない工程」について、同大会自体は手作業で機械を動かしているが、実際の職場でも、同じように手作業での加工内容もあり、もちろん自動化工程は多いが「用途によっては、このような手で動かす設備を使っている」とした上で、次のように言及した。

「考え方にもよるが、最初からマシニングセンタ(MC)での加工ではダメなのかといえば、決してそうではない。ただし、最終的にMCを使う上で、こういった汎用機や手作業で操作する機械を使うと、やはり実際に削る肌感覚がわかり、自分が得たことをMC加工に活かせるといった有利な点はある」。

なお、12月25日に同社本社では、全社大会の表彰式を予定している。


▲ライブ中継も行い幅広い見学が可能となった(2003年~)

▲選ばれた選手・コーチは自職場・製作所の応援のもと全社大会に参加

 

 

 

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