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サンドビック“コロマントキャプト”ユーザー「三陽鉄工所」

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136svuser52 「何よりも『品質』の追求。より付加価値の高い製品に仕上げるため、受注ありきではなく、自社の意思での設備を。今は『設備ありき』の受注が出来つつある」。
 こう語ったのは、東大阪市で精密部品加工を手掛ける三陽鉄工所の藪本博信専務。

 

 

写真:30台近くの設備が並ぶ工場内

 各種材質を相手に材料から「一工程完品」に取り組む同社はかつて、一業種依存体質であったが「もちろん、これまで育てていただいた大切なお客様」との大前提を踏まえながら、3年前に芽吹きつつあった新規、新分野からの加工依頼も増えつつある。同時に、ステンレスはもちろんのこと、チタン・ハステロイ等といった難削材加工にも挑み、今では多業種に至っている。今がまさに「ラッシュ」の真っ只中であり、「半導体装置、メカニカルシール、磁気シール、医療機器、交通システム、の各部品など」と、その例を挙げる。しかも、特筆すべきは、それらが「大手メーカー」からの同時立ち上がりだということだ。
 ここに至る経緯を「何よりも品質。もう普通の品質ではふつう・・・お客様の品質に対する要求も日増しに高くなり、正直、難しい。それに対し、逃げるのか、喰らい付いていくのか・・・」と自問自答しつつ、「逃げたことは、まず、ない」と断言。「その上で成し遂げた時、すなわち、お客様から評価をいただけた時の灌漑はひとしお」だとする達成感、つまり、その成果が「三陽に任せておけば大丈夫!」とのリピートにつながっているということだ。
 同社では、2年前に複合旋盤『NLX2500Y』を、続いて昨年には、複合旋盤『NL2000Y』を2台、そして、4軸複合加工機『NZX2000T2Y』を新たに導入した(何れも森精機製)。
 「大手得意先様と取り引きすると、また別の大手得意先様へ評判を広げていただき、以前は、到底、お取り引きできなかったユーザー様からもご依頼いただいている。同時に、今までの『あたり前』から脱却し『品質に目覚め、意識が変わった』。だからこそ、より、品質を追求するためには、複合旋盤の存在は欠かせない」。
 同社に対しては、近隣や同業他社からも「ここまで複合旋盤をちゃんと使っているのを初めて見た!」といった声が後を絶たないという。藪本専務自身は反面教師的に「実際、せっかく、複合旋盤を導入していてもミル加工をせずに加工していたり、マシニングでやったほうが速いよ、と聞かされたり・・・もっと複雑なワークを加工出来るのでは?と問うても『いや~、できない、こんなややこしいの』との返答を多々、見聞きしてきた」と、今風にいえば「複合旋盤あるある」ともいうべき事例を挙げ、このような「宝の持ち腐れ感」、「持て余し感」を引き合いに出しながら、「本来、複合旋盤による、製造品質の向上、省面積・省時間で生産性を向上させるために導入しているのに、なぜ?」と、その重要性を説く。
 このように、3年前に志した「設備が仕事を呼ぶ」状態が続いているが、『コロマントキャプト』(サンドビック)の存在が大きなエポックとなったようだ。
 コロマントキャプトとは、切削工具保持、締結に使用するツーリングシステムであり、機械導入時には、当然、自動車でいうところの「純正部品」が搭載されているが「後付け、チューニング」的に、高剛性、高精度、旋盤でのクイックチェンジ化、旋盤とマシニングの工具共用化などによる、生産性の改善や向上、加工コストの低減をもたらせるツーリングシステムである。だが、コスト的に、従来では、あまり機械メーカー自身が積極的に推奨することは多くなかったのが現実のようで、その流れに一石を投じているのがサンドビックであり、1990年の市場案内スタート以降、2008年にはISO規格、ラインナップを随時拡充するなど、その先駆者でもある。
 「機械の能力を最大限に、余すところなく発揮できるシステムだと思う。重切削対応、高剛性、多種多様な刃物を使用する上でのクイックチェンジの観点・・・と全てに長けており、その優位性は歴然としている。それは、最初の搭載時に、即、体感できた。とにかく『これさえ持っていれば』という感が強い」。
 三陽鉄工所でのコロマントキャプト搭載初号機は、先述のNZ2000T2Y。元々は、出入りの工具販売店からの熱心な提案に始まると述懐する。
 「当時はまだ、失礼ながら、海の物とも山の物ともわからなかった・・・が、とりあえずサンプル的にC3(カップリングサイズ)を導入してみた。極端にいえば、機械はメーカーから買える。だが、この『デコレーション力』は、工具屋さん、サンドビックさんとのスウィングがあってこそ」。
 この流れは、折りしも、サンドビックが昨年発足させた「コロマント・ツーリング・パートナー」(CTP会)の「販売商社・機械メーカー・サンドビック・ユーザーが『四位一体』となって生産性向上を目指す」という趣旨に、図らずも先んじた形となった。
 「昨年末導入の3機にはC4を、今回は『自信をもって』より生産性を上げるために『フルスペック』で搭載した。これから立ち向かっていく難加工に対し、この設備で挑戦していく自信がある」と藪本専務は纏めた。
ユーザー通信136号(2013.4.1)掲載

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