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ニイガタテクノユーザー「TMTマシナリー松山工場(愛媛県)」

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138NIGATA 合成繊維製造設備の業界では、この10年、日本のTMTマシナリー社とドイツのバーマーグ(BARMAG)社との2強時代が続いており、僅差でシェアを競り合っている。
 TMTマシナリーは、国内の合成繊維製造装置メーカー大手3社であった、東レエンジニアリング、村田機械、帝人製機(現ナブテスコ)の繊維機械部門が2002年に統合して起ち上げられた。合成繊維製造設備の開発・設計・製造、販売およびアフターサービスが主要事業で、合成繊維製造機械のトータルメーカー。大阪に本社を構え、京都にテクニカルセンターを、滋賀の大津と愛媛の松山に製造拠点を構える。
 松山工場は、同社最大の製造工場。資材が搬入されて以降、機械加工、組み立て、検査、出荷に至る一連の設備が整っており、一通りの製品製造を行う。
 合成繊維は、主として製造工程中に熱処理を行う高強度の糸「FDY」と一般的な強度の「POY」とに分けられる。「FDY」はタイヤコードやシートベルト、編機など、高い強度を必要とする分野向けの糸で付加価値が高い。同社はこの「FDY」の製造設備に強く、世界で高いシェアを持つ。一方、「POY」は熱処理工程がなく、巻き取り後に様々な用途に合わせて加工され比較的需要量が大きい。この市場は今後も拡大傾向にあるため、同社では、「POY」製造機械の販売シェア拡大を目標に掲げる。糸需要が高まる中で合成繊維設備機械の需要も高い水準を維持。リーマンショック後の回復も早く、ここ3年では右肩上がりの売り上げを続けてきている。  合成繊維の製造能力は、糸を巻き取る機械である「ワインダー」の能力に左右されている。メーカーは、このワインダーの開発に力を注いでいる。
 近年、衣料の製造現場は、中国に集中している。競争は激しく、生産量を上げてコストをより低減するために、糸の製造能力向上を図る企業が多くより高速で効率的に糸を巻き取れる高性能なワインダーを次々と設備投資している。最近では、1台のワインダーに、巻き取り芯(ボビン)を4本備える高性能機「MANTAⅡ」などが売れ筋となっている。
 ワインダーに求められる性能は、高速巻き取りに加えて、「巻き取り品質の高さ」と同社松山工場生産技術課の石丸徳希課長は言う。「糸は、フィラメントと呼ばれる直径10μm程度の細い糸の束で構成されており時速330㎞程度の速度で連続的に巻き取られる。巻き取り中は、糸切れはおろか、フィラメント切れも許されず、連続的に巻き取るために、糸の張力やパッケージ形状を精緻に制御することが求められ、回転体の高精度制御技術や振動抑制技術が必須。このあたりの技術は、当社が、TMT以前の3社時代からの『糸』に関する様々なノウハウを長年培ってきたからこそ成しえるもの」。
 このような微妙な制御を、実際に製品として成立させるには、機械そのものの精度も高くまとめる必要がある。当然、「機械部品の加工精度も、非常に厳しいものが多い」と同課の中矢尚樹主事は言う。
 「ボビンは、パッケージを何個設定するかで長さが変わるが、長いものでは2m近くなる。パッケージの交換を素早く行うために、ボビンを片持ちに設計することが基本だが、長い円筒状のボビンを高速で回転させるわけだから、振動の問題は不可避。振動が起こると糸品質を著しく低下させるため回転体の部品精度には最も気を遣う。フレ、真円度、同軸度など、μm単位で仕上げなければならない」
 同社ではこの数年、増産に向けた設備投資を行い続けて来た。直近では、2011年以降、20台近くの工作機械を導入している。その内の3台が、ニイガタマシンテクノ製の横形マシニングセンタ。最初は11年9月に「HN63E」+ロボットシステムを1台。
 「糸を加熱し適正な熱処理を巻き取り過程で連続的に行う『加熱ロール』という部品の加工。加熱ロールの長尺化も進み、それに対応する設備の必要性に迫られたため。角スライド機で、ギアシフト、低回転、高トルクの主軸を持つ、いわゆる重切削が可能な横形MCを求めていた。細かな仕様の提示に対して、もっとも、誠実に答えてくださった機械メーカーさんがニイガタさん。特に、ツールの『ビビり』対策に高い技術を持つメーカーさんだと感じた。単位時間当たりの切屑排出量のデータに併せて、ホルダのクランプに関する技術的な資料を、即座に作って下さった。市場開発担当部長さん自ら、A4で5~6ページの資料。カウンターボーリングへの変更など、加工のご提案も頂き、加工の改善に主眼を置いた提案ができるメーカーさんで、そこをもっとも評価した」。
 翌年には「Box in Box」構造、3点支持構造の『ULTY901』を2台導入。リニアガイド機で1万5千回転主軸仕様とし、高速高送り加工を目的として選定した。テーブルサイズに対してY軸のストロークが特出して大きい事も選定理由のひとつ。
 機械の今後の方向性として、アプリケーションの充実とスペース低減を求める。
 「ニイガタさんは、サポート体制も良い。今後は、加工のサポートをソフトウェアで持たせる工夫を通して、よりユーザフレンドリーな機械にしていただけるとなお良くなる。情報の交換を通じて、ウィンウィンの関係を築いていきたい」
ユーザー通信138号(2013.6.1)掲載

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