切削工具にも「キャラバン・セールスの機微」
切削工具にも「キャラバン・セールスの機微」
皆さんは、『動くスーパー』なるものを記憶しているだろうか。
40年ほど昔、団地の敷地内やベッドタウンでよく見かけた光景で、主に食材、生鮮品を積み込んだマイクロバスや軽トラックが顧客の住む近くまで出向き、店舗展開する小売スタイルだ。
「移動販売」や「移動店舗」とも呼ばれるが、ここではあえて『動くスーパー』とベタに呼称したい。
高齢化社会、過疎化、町から小規模スーパーの撤退が続く昨今、この『動くスーパー』が再び脚光を浴び、ニースが高まっているという(その市場規模は280億円とも)。
いわゆる「行商」、正式な流通用語では『キャラバン・セールス』となるが、いま、切削工具メーカーによっては、このキャラバン・セールスでの成果を、非常に重要視する向きもある。
メーカーは、機械工具販売店が選定し顧客(主に中小工場)に訪問し、例えば、昼休みの駐車場などを利用し、専用車内に積んできたドリルやエンドミルなどを広げて「店」をオープンし「即売」する。
当日持ち込む「オーダーメニュー」は、前もって顧客と念入りに打ち合わせし、予めリクエストされたものだが、「プラスα」となる新製品などの展開が、「あれも! これも!」と購買意欲を掻き立て、数字を積み上げる。
このように「心理的に売れる」のが、キャラバン・セールスの醍醐味であり、また、よく理解しておくべき「趣旨」だと、この活動で大きな成果を上げた関西地区のある販売店はいう。
「趣旨とは、見てもらうのではなく、あくまで『買ってもらう』ということ。最初は正直『昭和の商売? こんな古臭い・・・』と思ったが、1件行けば1時間では終わらない。次から次に『これ何ですか?』となる。元々『ドン引き』していて『絶対に買わないよ』と身構えていたユーザーが、実は一番買っていたりする」。
これを全国希望で行えば「侮れない」数字になることは察しがつく。
前出の販売店が続ける。「この活動が成功する度に、メーカーも我々も、互いに士気が上がるので、販売店側からすれば、なんとなく『そのメーカーさん贔屓』になってくるのが心情というもの」。
切削工具にも、キャラバン・セールスの「機微」を探ることができる。
(画像はイメージです)
2017年8月30日