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ユーザー通信229号:第5面 トラスコ中山の現時点 業界最高の利便性目指し「トラスコらしさ溢れるDX戦略」推進

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オンライン決算発表

高粗利率の環境安全用品、eビジネスルートの好調により売上総利益率が増加

「在庫は成長のためのエネルギー」(中山社長)

トラスコ中山(本社=東京都港区・大阪市西区)は2月12日、令和2年(2020年/第58期)12月期の決算発表を行い、決算説明会および記者会見をZoomウェビナー上にてオンライン開催した。

経営成績は、売上高 2134億4百万円(前年比3・3%減/予算比0・7%増)、売上総利益 459億9百万円(同2・4%減/同0・6%減)、販管費 348億9100万円(同5・0%増/同0・7%減)・うち減価償却費 65億6500万円(同34・6%増/同1・7%増)、 営業利益 110億1700万円(同20・1%減/同0・3%減)、経常利益 115億5900万円(同18・6%減/同1・3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益 80億7百万円(同16・7%減/同2・0%増)。このうち、プライベートブランド商品売上高は413億2百万円(同5・9%減/予算比1・1%減)、設備投資額は80億6100万円(同116億6千万円減)となった。

以上をベースとした令和2年度の総評および中山哲也社長による今後の取り組みで語られた「トラスコ中山の現時点」は、概ね次のとおりとなる―。

セグメント別の概要は、ファクトリールートでは、2019年から続く米中貿易摩擦と新型コロナウイルス感染症(以下、新型コロナ)拡大による工場の稼働減により、切削工具、設備投資に関わる物流保管用品の分野などで売上高が伸び悩んだ。

商品別カテゴリー別の実績では新型コロナ感染予防に関わる手袋、マスクなどのカテゴリーが売上高209億7500万円(前年比15・6%増)と堅調に売り上げを伸ばした一方、コンテナなどの保管・管理用品が前年比18・8%減、台車などの運搬用品が同17・6%減と設備投資に関わる商品のカテゴリーが前年割れとなった。

eビジネスルートでは、新型コロナ感染拡大による巣ごもり効果の影響により、特にB to Cを中心とするネット通販企業との取引が拡大した。引き続き、ネット通販企業から受注した商品をユーザーへ直送する物流体制の構築、約233万アイテムの商品データベースを活用したシステム連携など、物流連携、データ連携による協業関係の強化を図っていく。

ホームセンタールートでは、巣ごもり効果でホームセンターへの客足が増加したことにより売上高が好調に推移したことに加え、仕入先変更による売上高増加や、職人向け専門店のプロショップの売上高が引き続き拡大していることも売り上げ好調の要因となった。

売上総利益については、プライベートブランド商品の粗利率が0・6㌽、ナショナルブランド商品の粗利率が0・2㌽上昇した。粗利率の高いマスクや手袋などの環境安全用品の売上高が増加したこと、粗利率の高いeビジネスルートの売上高が増加したことのミックスにより、売上総利益率は前年比0・2㌽増となった。

トラスコ中山では社内的に数値目標とともに能力目標を掲げており、令和5年(23年)までに達成したい能力目標として、次の3つを挙げる。

まず「在庫50万アイテムの保有」。現在は40万強を50万アイテムにまで引き上げる。現在の在庫総個数は、おおよそ4500万個という凄まじい数字が存在する非常に在庫の多い会社だと自認する。在庫が多いといえば、世の中的には少ない方が良いという向きが大勢を占めるが、同社では「在庫は成長のためのエネルギー」だと考え、さらに在庫を持って力をつけていく。

コロナ禍でユーザー直送ニーズが急拡大

次に「ユーザー直送システムの完備」。

コロナ禍で最も変化したのがユーザー直送の増加であり、同社のような卸売業が発注元のユーザーへ直接荷物を送るということは、これはもう物流革命以外の何物でもない。

どの問屋でも直接の顧客(販売店)への配送システムは持っているが、その先のユーザーまで直送する力を持っていることは、まずない。コロナ禍によりこのニーズが急拡大しており、これにより納期が最低1日短縮する。場合によっては2~3日短縮でき、コスト削減も可能(ホップ→ステップ・・・ではなく直送で運賃半額)というメリットもある。ユーザー直送とは世の中の流れであり、このニーズに応えていく。

最後に「365日受注・出荷を実現」。ユーザーの発注は年中無休であり、ユーザーの要望に休みはなく、これは必然の道のりではあるが、決して簡単ではない。少し時間は要すると予想するも、まずはネット通販企業への対応から手掛けるなど、力をつけていく。

以上に加え、究極の即納を実現し、全国展開でMRO流通の定番を目指す、富山の置き薬ならぬ「置き工具」=『MROストッカー』や、販売・在庫・格納効率を上げる1品ごとの販売実績データ分析は、ビッグデータとしてすでにオレンジブックにも記載を始めている。そして、AIの活用により「商品検索」「納期・見積り」「商品説明・機能説明」のレベルアップを図るAI見積『即答名人』等々を含め、ITで問屋としての機能を強化し、業界最高の利便性を目指す、「トラスコ中山らしさ溢れるDX」の推進を強調した。

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