ユーザー通信229号:第4面 DMG森精機の現時点 20年度決算発表
損益分岐点大幅引き下げにより営業利益は従来計画を確保
株主資本比率が35・2%まで復活
今期重点施策に「取り組むほどに利益創出に繋がるカーボンニュートラル」等
DMG森精機(本社=名古屋市中村区)は2月12日、2020年12月期(2020年1月1日~12月31日)の決算発表を行った。
決算概要は、連結受注は2797億円(前年度比31・7%減)、機械本体の受注残高は960億円(同34・2%減)、売上収益は3283億円(同32・4%減)、営業利益は107億円(同71・4%減)、営業利益率は3・3%(前年度7・7%)、税引前利益は51億円(前年度比83・8%減)、当期利益は17億円(同91・0%減)、親会社の所有者に帰属する当期利益は17億円(同90・3%減)。
同社ホームページ上でオンデマンド配信した決算説明会で、森雅彦社長が実績ハイライトとして語った「DMG森精機の現時点」は、概ね次のとおりとなる―。
受注は第2四半期(20年4~6月)を底に回復してきている。機械本体の受注残高は19年末で1460億円だったので、21年は500億円減少した受注残を期中成約、期中売り上げで回復していく必要がある。より早い顧客へのレスポンス、工場での生産等努力しなければならないが、過去の景気回復局面を経験しているので、顧客需要に遅れることなく、受注残の減少をカバーしていきたい。
不況の折りには廉売するメーカーも出てきているが、それに対抗し、高速・高精度・5軸化・複合化・ターンキー化・自動化によりなんとか1台あたりの平均受注額を維持(前年度比横ばい)できている。
デジタルマーケティングが期せずして進展
コロナ禍により、デジタルマーケティングが期せずして進展しており、兼ねてより仕込んでいたデジタルツインショールームやオンライン展示会、顧客向けの個別オンラインセミナーが非常に効果を発揮し、好評を得ている。
ただし、リアルの環境も重要であり、毎週金曜日に、ごく限られた少人数の顧客に対する商談会「テクノロジーフライデー」を、三密にならない対策をした上で、三重・伊賀事業所および東京GHQ(潮見)にて地道にリアル展示会を行ってきた。これにより、より真剣な引き合いを持った顧客と数時間にわたり議論を繰り返すことで、昨年の受注や今年以降の大きな引き合いへと繋ぐことができた。
損益分岐点を3850億円から3020億円に大きく引き下げた。その多くは社員の協力によって給与や役職手当のカット等を行ったことによるが、それ以外にも、リアル見本市が開催されなかったことによる数十億円の削減など、ありとあらゆる手はずを立てた。
ハイブリッド資本を導入したことで、株主資本比率を35%まで復活することができた(19年度は24%)。
税引前利益(51億円)と当期利益(17億円)の間が大きすぎるが、これは一部の赤字となった会社の税負担等が大きくなっているためであり、21年は正常化するものと考えている。
18年後半からの米中貿易摩擦に加え、COVID-19(新型コロナウイルス)感染拡大により受注、売上は大幅に減少したが、損益分岐点売上高の引き下げにより、営業利益は従来計画を確保した。
世界金融危機(リーマンショック)との比較で見れば、当時(08年3月期~11年3月期)はまだAG(独グループ会社)との連結前の森精機単体であり、受注額は1772億円から618億円へと2年をかけ65%減となり、今回(18年12月期~20年12月期)は連結受注で5312億円から2797億円へと約半減(48%減)となった。
世界金融危機時は落ち込みも激しかったが、回復は比較的早かった。しかし今回は、今後22~24年にかけ、緩やかに回復していくのではないか。結局、谷(景況の底)の面積としては同等になると考えている。
21年度は売上・利益とも前年度横ばい計画
ただ、世界金融危機時は大きく赤字となったが、今回(20年12月期)は黒字を維持できている。21年12月期は受注残が減少した影響で当初から数百億円のハンディキャップがあると考え、まずは20年度なみの売上収益3300億円で、同じ損益分岐点(3020億円)をキープし、最低でも110億円の利益を確保したい。
なお21年度は、脱炭素社会関連需要の取り込み強化、サステナビリティ経営の強化、社外取締役比率40%・外国人取締役20%・女性社外取締役10%といった取締役会の多様性などガバナンス強化、DMG MORI製品カーボンニュートラル達成なども重点施策として謳う。
中でも、脱炭素化については、リーン生産やネットワーキングキャピタル(売上債権および仕入債権)の減少、速い加工、速い組み立て等、取り組めば取り組むほど、カーボンニュートラル=会社の体質強化、利益の創出に繋がるとわかってきた。今後もますます取り組みを強化し、また中小事業所の自社での取り組みのサポート役にもなっていきたい。
2021年3月30日