ユーザー通信226号 第8面:シリーズ アフターサービスの現時点 岡本工作機械製作所
シリーズ アフターサービスの現時点
岡本工作機械製作所
―コロナ禍でのサービス部門の活動
秋山 当社のサービス部門は工作機械と半導体製造装置に大別され、そのうち工作機械でのテスト加工を行うグラインディングプロセス課も含めた3部門を私が受け持っている。
新型コロナ感染拡大の第2波(今年7月末~8月頃)となった当時は、お客様方は他県からの訪問に対し過敏に反応されていたケースも少なくなかったが、当社は国内の9拠点全てにサービスマンが在籍しているため、同県内のサービス業務は行えていたので、さほど大きな落ち込みはなかった。
もちろん、全サービス員に対しての体温測定や健康状態のチェックをシートにして一括管理し、徹底した上での対面作業に臨んだ。特に半導体製造装置については、現状、国内よりも中国、台湾、韓国といった海外への装置輸出が増えており、現地へ行けば丸々1ヶ月間(到着後2週間+帰国後2週間)の隔離が必要となる中で運用している。
―サービス部門の体制
秋山 国内の工作機械サービス部門が国内約50名、半導体製造装置部門が国内・海外で約20名だが、先述のように現状では、半導体製造装置部門のほうがひっ迫している。
―サービス員増員
秋山 この中には、カリキュラムを組み、明確な指示のもと、工場での3ヶ月を経て、OJTを実施しながら、1年後にはもうお客様に出向きサービスにあたっている直近補充の8名も含まれている。このように最近では「人材の育て方」も変わってきている。
―コロナ禍前後での機械メンテナンスの依頼状況の変化
秋山 第2波の頃はカスタマーサービス本部へのコール件数も少なかったが、第2波が落ち着き、現在の第3波がやって来るまでは、明らかにコール件数が頻繁になった。ということは、お客様の稼働率が上がってきたということ。工作機械は景気が悪いときほど修理・メンテナンスをして機械を長生きさせることが多いため、サービス強化をこの機に行っていきたい。
今年1月からこれまで、1日あたりのコール件数は平70件だが、今週(※取材した11月第2週)は特に多く、全国で100件を超えるに至った。電話で解決する件もあるので、コール全てが訪問案件というわけではないが、1ヶ月にすればコールは約1400件、訪問件数は約900件となる。
―保守メンテナンスサービスをパッケージ化
秋山 以前は製造部の中の一部門だったが、事業部制の一角を担うカスタマーサービス「本部」となり、保守メンテナンスサービス自体での収益貢献が必須となった。
そんな中で、保守メンテナンスサービスの新たなサービスパックを3種類用意し、今年6月から本格的に展開している。研削盤各種ごとに定額制とし、サービスに要する時間は4時間(基本料金内)を目安としている。
―『静的精度検査&機械修正』
秋山 基本作業はレベル出し、チャック研削、静的精度検査表作成、スピンドル振れ調整、6点ピース研削、点検作業。機械の精度を維持するためには、1年毎のこういったメンテナンスの推奨を既設、新規納入のお客様問わず案内を徹底している。
―『潤滑油&油圧油 交換作業』
秋山 当社指定油とストレーナ交換作業、機械点検作業、スピンドル振れ調整が基本作業で、現状では廃油・廃油缶処理は除いている。機械の不具合は油圧機器に起因するものが大半なのだが、お客様にとって油の管理は最も避けたいことのひとつであり、そこに着目したサービスで、成果が出ているという意味で最も顕著なのがこのサービスといえる。
研削盤の平均寿命は約20年と長く、長期使用することはお客様もわかっていることなので意外に好評を得ており、さらにこのニーズはコロナ禍や景気ダウンに関わらず、機械が動く以上は絶対について回る案件ということもあり、目標数字に対しクリアしている。
―『機械操作再指導』
秋山 機械の基本操作を再指導し、対話マクロ再指導、現状ソフトの最新バージョンアップを行う。中小のお客様ではオペレーターの退職で引き継ぎができていないケース等もあるが、現状では、まだそれほどニーズは多いとはいえない。
―中古機登録制度
秋山 加えて、昨年10月からは、中古機械の登録制度(有料)を導入し、当社製の中古研削盤を購入されたお客様へのサポートも行っている。その機械固有のサービス履歴、修理履歴があり、それを知る、知らないでは、対応に雲泥の差がある。私はタイの生産拠点【Okamoto(Thai)Company Ltd.】にも赴任していたが、海外ではよくあるサービスで、日本でも順調だ。
―将来的には
秋山 業界的にはこういったサービスは広がっていくだろう。実際のところ、新品の機械本体の売れ行きが鈍くなれば、他の部分で収益を出さなければならず、そうした一環ではあるが、その結果がお客様のサポートとして反映できれば、両者にとってWin Win、 まさに「B with Bへの進化」といえるのではないか。
今後は、国内のサービスレベルでのグローバル化が必須であり、海外の各拠点にサービスのリーダー、それに加工のオペレーションもしかりでオペレーターのリーダーを配する、そういった体制でなければ成り立たない時代だと思う。これはもう、マシニングセンタメーカーや切削工具メーカーではできていることだが、まだ研削盤メーカーではそこまで到達できていない。だからこそ、トップシェアである当社が目指さなければならない。
2020年12月15日