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東芝機械ユーザー「共栄エンジニアリング(新潟県」

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 今年で創業20周年を迎えた新潟県阿賀野市の共栄エンジニアリングは、独自のナノ加工技術を武器に、微細精密加工分野で他社の追随を許さない企業。130toshiba

 

 

 

写真:撮影者が写り込むほどの鏡面加工も「UVM」があればこそ

 同社は、OA機器関連や半導体関連、光学機器関連、自動車関連、航空宇宙関連の部品およびその金型の試作品製造が中心。被削材は樹脂・ステンレスからチタン・インコネルまで幅広い。金型では各種の射出成形機も備えており、中・小ロットの試作~金型製作~成形まで一貫して行う。過去には、皇室で使用される専用自動車「御料車」用のフロントグリル等の各種外装部品を製造し納めた事もあるという。自動車の顔といえる正面の部品製作を依頼されるのだから、微細に限らずその技術力はお墨付き。

 

 発注元の開発・設計者の理想の形状を、どれだけ忠実に模すことが出来るかが求められる試作製造では、精度追求に限界を設けられない。時には、工作機械の能力を超えるような精度でも形にするための挑戦を続けている。

 「設備を豊富に揃え、±5μm以内の公差でもお応えできる精度の高い加工だけでなく、顧客の要望を読み取り形にすることが出来るのが弊社の強み」と渡辺尚常務は話す。

 「高精度な加工を要する部品には重要部品が多く、秘密保持の観点から顧客から十分な情報を頂けない事がある。時には、最終的な目的だけを告げられ、『その目的を達成できる部品・ユニットをどのように作ればよいか』といったご相談を頂く事もある。どのようなご要望でも可能な限り顧客の理想を現実化する努力を続けてきた。おかげさまで、例えばカメラ部品ではほぼ全てのメーカーさんとお取引があり、Aランクといわれる精密な部品の試作時には、弊社を名指しでご注文頂くことまである」
 渡辺常務同様、「機械の能力に頼るだけではいけない」と言うのは生産技術部の佐藤大次長。「顧客から、同時5軸加工を用いなければならない複雑形状のワークで、公差±1μm以内に仕上げて欲しいという超々高精度な加工を求められたことがある。どの工作機械メーカーさんに相談しても『無理』との返事だった。しかし、機械チューニングやNCプログラムの出力方法を工夫したことで、既存の5軸加工機でご要望にお応えできる加工を成し遂げた。チャレンジ精神を持って技術を高めていく事は大事だと感じられた例」
 他にも、φ0・5㎜、深さ150㎜の穴明けニーズに挑戦するなど技術力向上に余念は無い。現在、φ1㎜のドリルを用いて「SUS303」に深さ150㎜の穴明け加工には成功している。
 安易に「限界」を決めず、常に「次」を求める姿勢は設備の選択時にも適用される。同社では昨年3月、照明系機器に用いられる導光体への微細溝入れ加工を行う目的で、東芝機械の超精密立形加工機『UVM‐450C』を導入した。X/Y軸の精度誤差±0・5μm以内、Z軸の精度誤差±1μm以内という高い精度の加工実績と、高精度加工機としては、450㎜四方の広い加工域を持っている点も評価してのこと。
 「微細精密」と聞くとワークも小さなものだと思い込みがちだが、「大きいワークへの微細・精密加工」が近年のトレンド。半導体や光学素子もその1つ。
 従来の半導体プロセス『フォトリソグラフィ』では、形状サイズと精度誤差が比例しているので、比較的大きい形状では高精度の追求が難しかった。同社では、『UVM』を用いて半導体に使用されるマイクロレンズアレイ等の微細形状加工を切削で実現。また『UVM‐450C』は超精密5軸機でもあることから、高精度を実現しながら450㎜角、Φ650㎜までフレネルレンズ、レンチキュラーレンズ等を拡大させられるようにした。大きな光学素子を用いた設計を諦めていた映像機器メーカーには、製品の開発に向けて朗報となる。
 微細精密加工を追求すると、専用機が必要となる。ナノオーダーの精度を出すレンズ加工機などがその例だ。しかし、単品加工すら当たり前の試作加工業者である同社にとって、機械に汎用性の高さを求めるのは当然のこと。対応ワークサイズの大きい点など微細精密加工機としての使い勝手の良さも佐藤次長は高く評価する。  「『UVM‐450C』は、工夫次第でより精度の高い加工が出来る機械。使うほどに『もっと高精度な加工が出来ないか』という欲が引き出される」と佐藤次長。今後、微細精密ワークの大型化が進む事を見越して、今年2月には2台目の『UVM‐450C』導入に踏み切った。
 「単結晶ダイヤモンド工具を用いてHRC52位の焼入れ鋼に鏡面加工したサンプルを作った事がある。通常ではダイヤモンド工具では困難な加工だが、それを実現できるのは『UVM』があればこそ。個人的には、熱源である制御盤を本体から切り離すなどの工夫すれば、さらに精度を出せると考えている」
 精度のあくなき追求を行う同社の技術があれば、全てを切削加工機で仕上げられる時代が来るかもしれない。
ユーザー通信130号(2012.10.1)掲載

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