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ユーザー通信220号 8面:1月/TCTJAPAN2020 未収録Playback篇

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1月/TCTJAPAN2020 未収録Playback篇

立花エレテックを感じに、3Dプリンタによるものづくりでの「シンギュラリティ」に挑戦!

東京ビッグサイトで今年1月29日~31日の3日間、4万7千人超が来場(同時開催展含む)した国内最大の3Dプリンティング総合展「TCT JAPAN 2020」に、『Kansai-3D実用化プロジェクト』が初出展した。

ブース出展(8ブース)のうち、実用化に挑戦する支援企業6社の販路開拓を支援するとともに、プロジェクトのPRを図り、講演についても立ち見が出るほどの盛況ぶりをみせた。

海外では国レベルで3Dプリンタに関する取り組みが行われているが、日本ではどうだろうか。

平成26年度から30年度までの5ヶ年事業として、内閣府のSIP(戦略的イノベーション創造プログラム)や経済産業省が中心となっていたTRAFAM(技術研究組合次世代3D積層造形技術総合)で素材や装置などの開発が進められ、現在はグローバルにおいて加速する3Dプリンタによる最終製品の造形という流れに少しでも追い付くため、新たな政策がまとめられている。

さまざまな分野での「新たなものづくりの変革モデル」を創出

そのような中、2019年1月に、近畿経済産業局から発表されたのが、「3D積層造形によるものづくり革新拠点化構想」であり、この構想では企業における3Dプリンター活用のための課題対応や、先端的な技術開発支援のため、産学官連携による広域ネットワークを構築。3D積層造形を活用した新たなモノづくりの普及を目指す「3Dものづくり普及促進会」(Kansai-3D実用化プロジェクト)と連携している。

同会の会員は3D装置メーカー、装置代理店、レンタル事業者、サービスビューロー等。この中で、電機・電子技術商社のリーディングカンパニーとして名高い、立花エレテックが、いわゆる「幹事」(事務局)を務めており、TCTの出展ブースで同社担当者は、「まずは『情報屋』として使っていただきたい」とふれた。

同会は、立花エレテックの本社(大阪市西区西本町)に設置予定の実用化拠点を中心に、ロボット、機械、医療機器分野等のさまざまな分野での「新たなものづくりの変革モデル」を創出し、25年の国際博覧会(大阪・関西)につながる未来の技術開発に挑戦している。

例えば、兵庫県立大学では19年6月に金属の新素材研究センターを開設し、素材メーカーと連携し実用化に向けた新素材開発研究を展開している。

3D積層造形によるものづくり革新拠点化構想では、「初心者から上級者向けの3D造形基礎演習&試作トライ&実用化トライに向けた装置導入支援」、「中級者から上級者向けの3D造形技術開発支援」、「評価・分析、上級者向けの3D造形等の開発支援」の3段階に分かれてることが注目に値する。
TCT JAPANの会場ではほかにも、次のような見解が拾えた。

3Dプリンタについては、かなり昔から使っている企業もあるが、AIと同じく、先行者はどんどんと先進的な取り組みに邁進してもらい、そこで失敗と成功のノウハウを積むことで、3Dプリンタに関する様々な事柄が普及していく。

そんな中、2019年には神奈川県座間市のプロトラボズ社が、金属3Dプリンタの受託製造サービスを開始しており、3DCADを使わずに部品設計や製品開発を希望する発注者、2次元図面はあるが3DCADデータを作成できない発注者に対しても同社の提供するサービスが活用できる。

このようなサービスビューローに依頼する場合は、3DCADを使えない発注者でも発注できるよう支援している場合は多く、また、設計についても「3Dプリンタならではの設計」がわからなくても、ソフトウェアメーカーが3Dプリンタによる最適設計を支援するソフトの提供などが、3Dプリンタでものをつくるきっかけになりやすいと考えられる。

このように日本でも、3Dプリンタでのものづくりに「まずトライ」出来る環境は、そこそこ揃っている。「〇〇がないから・・・」ではなく、一歩を踏みだしてみることが必要だ。

フードプリンタで「3Dプリント寿司」開店

最後に、もう少し先の3Dプリンタの可能性を見れば、農林水産省が「3Dフードプリンタ」の影響と可能性の調査を行っている。

従来とは異なる調理方法によって、環境問題や人手不足などの社会問題の解決や、これまで両立の難しかった「便利かつ楽しい」といった価値の提供を実現できる可能性があり、その特長は「柔軟性」「再現性」「カスタマイズ」「オンデマンド」である。

たとえば、オンデマンドの特長を活かした災害食市場、柔軟性を活かした介護食市場といったところに可能性がある。さらには、自分の健康情報を事前に提供すると、その情報をもとにパーソナライズ化させたお寿司を食べることができる、なんと「3Dプリント寿司」が開店予定など、3Dフードプリンタの事業化に向けた取り組みが始まっているという。
(※1月29日取材時点)

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