オーエスジー、レンズ業界のビジネス拡大など微細精密分野をさらに強化へ
定時株主総会開催、昨期業績は微増収減益、今期売上高1600億円・営業利益210億円めざす
「利益に拘る政策進める」(大沢社長) 3年後(中計ステージ2)、営業利益率16%超へ
オーエスジー(本社=愛知県豊川市)は2月21日、ホテルアソシア豊橋で第112回(2024年11月期)定時株主総会を開催した。会場の株主出席者は84名。
議長を務めた石川則男会長は議案審議に先立ち、同社を取り巻く環境について、「日本経済が成長軌道に乗る大きなチャンスを迎えていると期待しているが、新たに発足した米国・トランプ政権は矢継ぎ早に関税を武器にした外交を繰り広げており、世界経済の行方、世界の政治そのものも予断を許さない状況になっている」と、同社のメキシコ、カナダ、中国の事業への影響を懸念し、生産体制の見直しを含めた準備に万全を期す旨述べた。
一方、自動車業界においては、「国内メーカーの品質認証問題による減産など強い逆風もあり、切削工具業界全体にとっては厳しい一年間だった」とし、100年に一度の変革期にある中、「成長著しい医療分野、特にデンタル、メガネ、コンタクトレンズ、白内障用の眼内レンズ加工等の切削工具ビジネスを拡大していく」と対応策を挙げ、半導体産業、光学機器用の精密部品・金型などで「すでに成果が出つつあり、微細精密分野へのビジネス拡大に向けた活動に注力している」と説明。
同社グループには昨年、M&Aでダイヤモンド工具のトップブランであるオランダのContour社(コントア・ファイン・ツーリング)が加わり、また、単結晶ダイヤモンドのエンドミルでは世界世界最高峰の技術を持つマイクロ・ダイヤモンド(横浜市)を事業継承し、「精密分野での製品種類も技術レベルもアップできている」と続けた。
それらを踏まえ、先般、自身が訪れた中国のレンズ産業での話を引き合いに、「切削工具業界の中で、レンズ業界に同様の技術サービスを提供する競合他社は、ほぼ存在しないとわかり、オーエスジーの持つサービスの伴う技術力が活かせる分野だ」と確信を示した。
引き続き、前期(24年11月期)の事業概要、業績等を報告。連結売上高は1555億1700万円(前期比5・3%増)、連結営業利益は188億6800万円(同4・7%減)、連結当期純利益は134億3900万円(同6・1%減)。海外売上高比率は円安の影響もあり、前期と比較して増加し68・0%(前期は67・0%)。グループ全体では、為替換算の影響もあり、全ての地域において前期比で増加したが、利益面では人件費や原材料費の高騰により「微増収減益」と表現した。
セグメントの業績では、日本は売上高743億7百万円(前期比1・4%増)、営業利益72億5百万円(同9・7%減)。米州は売上高358億6300万円(同8・7%増)、営業利益44億1100万円(同2・4%減)。欧州・アフリカは売上高370億2千万円(同9・4%増)、営業利益31億1700万円(同15・2%減)。アジアは売上高377億8200万円(同5・0%増)、営業利益41億5300万円(同6・6%減)。国内では、先述の自動車認証不正問題の影響や設備投資の遅延等もあり、景気回復は足踏み状態となった。
そんな中、同社ではメインロジスティクスを日本の真ん中に位置する豊川市に移転し、昨年8月から稼働を開始した。物流の2024年問題を加味し、管理・輸送コストを下げ、顧客の利便性向上を目的に、在庫管理・発送業務を行い、拠集約により物流の効率化を進めていく。
今期(25年11月期)の取り組みとしては、超硬エンドミル事業のさらなる成長戦略のために、大池工場(豊川市)の建て直しと共に、旧・エスデイ製作所が茨城県常総市に新工場を建て、OSGグラインドテックとして生まれ変わり、今年1月から正式に生産を開始。そのほか、さらなる事業効率の向上に重点を置き、売上高1600億円・営業利益210億円を目標とする。
株主懇談会に新任執行役員の岩城氏・桝田氏が登場、プレゼンで「刷新」アピール
総会(報告事項・決議事項第1~3号)終了後は株主懇談会に移り、最初に大沢伸朗社長が登壇。冒頭、昨年末に明らかになった、ニデックによるまた新たな大手工作機械メーカーへのTOB提案等の話題にふれながら、主に中期経営計画のステージ2(25年11月期~27年11月期)について詳報した。
このうち、基本方針の中から「利益に拘る政策を押し進める」に着目すれば、ステージ1をこう振り返った。「社内における意識改革は順調に進んでいると評価できるものの、結果だけを見れば、利益面については、正直、やり切った感がない」。それを受け大沢社長は、「引き続き、高い収益性を目指すことが、ステージ2にとってはメインの取り組みとなる。今から3年間(27年度末)で営業利益率16%超え、ROE(自己資金利益率)10%超えに挑む」と強調し、「高いリピート率、新規顧客の割合が高い(約4割)」メリットを有する微細精密加工分野の開拓を進めることで、顧客産業を上回る成長をめざすと説いた。
そして今回は、新任執行役員の岩城篤史氏、桝田典弘氏が登場し、それぞれプレゼンテーションに立った。
DXを活用したモノづくり体系(岩城氏)
執行役員製造副本部長兼第2製造兼製造企画室長の岩城氏は、「DXを活用したモノづくり体系の刷新」を旗印に、「情報を清流化し、人作業で『止めない・らない』モノづくり」、「人の『カン・コツ・作業』からの」脱却」や「徹底した無人生産」等を解説した。
「新デザインセンター」へ変革(桝田氏)
最後は、デザインセンター長兼RDセンター担当の桝田氏が、「新製品開発スピード・利益貢献スピードアップへ変革」を掲げ、「デザインセンター内の業務スリム化で新製品開発へ大幅に人員シフト」や「特殊品受注の利益率向上、製品の統廃合強化」、「あるべき姿に原点回帰」等々を力説。「私たちなら必ずできる! 営業・製造・デザインセンターの連携で中期経営計画達成!」と終始声高に「新デザインセンター」への変革をアピールした。

▲株主総会で議長を務める石川会長 ▲株主懇談会での大沢社長

▲株主懇談会での岩城氏プレゼン ▲株主懇談会での桝田氏プレゼン

▲会場出席の株主は84名
2025年3月10日