ユーザー通信194号 オーエスジー 第105回定時株主総会開く
「M&Aなど積極経営・販路拡大を重視し経営に努める」石川則男社長
最新設備とITの最新技術を融合し「スマートライン」構築へ(国内主力工場)
オーエスジー(本社=愛知県豊川市本野ヶ原)は2月17日、同社アカデミー グローバルテクノロジーセンター(豊川市一宮町)を会場に、第105回定時株主総会を開いた。
議長を務める石川則男社長は総会に先立ち、「欧米、中国といった大きな経済圏が好調に推移していることもあり、自動車、航空機、半導体、ロボット、工作機械、建機等各産業、幅広い業種で切削工具の需要が増加している」とし、「社員一同、1本でも多くの製品をお客様に届けられるように努力している」とあいさつした。
総会では、事務局から株主数および議決権数の報告、会計監査人および監査等委員会からの連結決算書類にかかる監査結果を含めた監査報告、事業報告および議案の審議が行われた。
このうち第105期(平成28年12月1日~平成29年11月30日)事業報告では、主に次の内容が語られた。
あらゆる製造現場でものづくり産業に貢献しているオーエスジー製品のなかでも、特に、創業以来の製品であるタップは国内はもとより、世界で№1のシェア(30%)を誇っている。
そんなオーエスジーは、世界30ヶ国以上に製造・販売拠点を構築することで、さまざまな地域のユーザーニーズに応える体制を構築しており、日本はもとよりドイツ、メキシコなど世界7ヶ国に「テクニカルサポートセンター」を設置。ユーザーの加工問題に沿った解決法をフェイス・トゥ・フェイスで提案するなど対応力の強化により、これからも世界のものづくり産業を地球規模で支えていく。
また、2017年度(昨年度)もさらなる販路拡大を目指しM&Aに取り組み、世界5大陸のうちオーエスジーとして「最後の大陸」となるアフリカに本格的に進出するなど、新たな販路開拓に注力した。
さらに、国内外で増加する受注に対応すべく、タップの八名工場、超硬製品の大池工場を中心に連続加工が可能な最新の機械を導入し、国内主力工場におけるスマートライン構築のための設備投資を行った。
これらの結果、17年度業績は、連結売上高1201億9800万円、連結営業利益191億3700万円、連結当期純利益139億9300万円となった。
地域別の経済環境については、欧米は消費・生産・輸出に支えられて堅調に展開。米州における主要市場の北米で航空機関連産業向けが底堅く推移し、メキシコ、ブラジルでの自動車関連産業向けが好調だったため増収増益となった。
欧州・アフリカでは、既存組織の売り上げ増加に加え、M&Aによる売り上げが増加したことにより増収増益となった。
中国も堅調な個人消費・輸出を中心に持ち直しの動きが続き、その他アジアの新興国は以前の高い伸びと比べて鈍化したものの、一定の成長を持続した。
一方、国内においては、個人消費の伸び悩みはあるものの、自動車販売、輸出、投資に支えられ拡大を維持した。
この結果、国内では主要ユーザーである自動車産業関連向けを中心に需要が拡大し、主力のタップ、超硬ドリル、超硬エンドミルおよび転造工具の売り上げが増加し、前期と比較して増収増益となった。
そのうえで18年度は、Aブランドの新製品発売を予定しており、M&Aで獲得した新販路を活用し、さらなる受注拡大を目指す。加えて、昨年設備投資した工場の最新機械とITの最新技術を融合させ、72時間連続稼働が可能なスマートラインの構築に努める。
さらには、再研磨事業、コーティング事業をはじめとするサービス事業(アフターマーケット)にも注力し、世界中のユーザーのさまざまな需要に対応していく。
これら取り組みにより、18年度は連結売上高1300億円、連結営業利益220億円を計画。20年度には売上高1500億円、営業利益300億円の達成に向け、今年度もさらなる飛躍を目指す。
以上をふまえ石川社長は、「最近のOSG製品は随分と高能率型に生まれ変わっており、付加価値の高い製品が増えている。またM&Aなど積極経営を心掛けており、今後も販路拡大を重視し、経営していきたい」とまとめた。
これらを受けての質疑応答の一例では、「自動車産業におけるEV化が、今後のオーエスジーの業績にどのような影響を与えるのか、どう見通し、どのような取り組みをしているのか」に対し石川社長は、世界各国・各地域における環境問題と現状のバッテリー(リチウムイオン電池)問題のリンクを前振りとし、大沢二朗常務へとつないだ。
同常務は、「要は、モータがありタイヤが付いているという、理論的には『プラモデル』と同じになる。そういったなかで、確実に残るのは足回り(車輪を指示する装置)、等速ジョイント(CVJ)、そして『静音』にかかわるコンプレッサ。音が静かになれば、逆に、いろいろな音が気になってくる。その意味で『音が鳴るものの高精度化、静音化を図る』が、おそらくトレンドになってくる。こういった分野でのシェア拡大を目指す」との見解を回答とした。
総会に続く「株主懇談会」では、石川社長による「OSGのビジネスモデルは不変」(ソリッド工具世界№1を目指す戦略、仕事は海外に求める、ほか)と題した今年度の成長戦略と、海外戦略として韓国、ブラジル、ドイツ・スイス各市況報告が行われた。
このうち海外戦略における、主なプレゼンテーションの内容は次のとおり。
【韓国】
▽韓国の景気はいま、絶好調。半導体に関しては輸出だけを見ても前年比57%増だが、自動車産業では生産台数の減(ピーク時の2011年・460万台→17年・410万台)や少子高齢化のため、経済全体の成長率としては「氷河期に比較できる低成長期」▽OSG Koreaの売上高は「SAMSUNG効果」による15年がピーク。売上高構成比(推定)は、顧客産業別では順に、自動車、IT、その他。製品別では順に、タップ、エンドミル、ダイス、その他。
【ブラジル】
▽自動車生産台数は13年の370万台をピークに16年には220万台にまで減少したが、17年から増加傾向に転じ今年(18年)には300万台の生産が予定されている。
▽OSGブラジルの今後の取り組みとして、生産と販売政策については、タップは用途別プレミアムタップへの移行、エンドミル・ドリルはハイスから超硬製品への移行、超硬特殊品の短納期化(20日)への挑戦。
▽コーティング内製化および外販開始(15年)、ツールマネージメント初契約(17年)が新しい取り組み。ツールマネージメントはPSA(自動車メーカー)エンジンブロックとヘッドの生産工場にて、工具プリセット、在庫管理、使用状況管理を行っている。
【ドイツ・スイス】
▽ドイツの販売先別売り上げ構成は順に、販売代理店、自動車メーカー、金型ユーザー、機械・部品産業ユーザー、その他。製品別売り上げ実績は順に、タップ、エンドミル、ドリル、再研磨、その他。
▽「OSGアカデミー 欧州テクニカルセンター」が16年12月にオープンし、顧客向けセミナーや販売代理店向け講習会、自社社員教育施設として活用している。17年度の実績は811名の顧客が来場。
▽日本の切削工具メーカーでは、おそらく初となるドイツ自動車工業会の品質認証システム VDA6.4を取得。
▽スイスの販売子会社・フィッシャー アンド ボリ(16年12月よりOSGグループ会社)の製品販売構成は、50%が切削工具、50%がクランピングシステム(設計・製造・販売)。OSGブランドの製品をスイス市場で拡販していく。
2018年4月6日