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関東製作所の渡邉社長が記念講演 「製造能力強化よりも需要創出への投資に注力を」/岐阜県金型工業組合 通常総会

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5月24日、大垣フォーラムホテルで開催された岐阜県金型工業組合の第54回通常総会では、組合員でもある関東製作所の渡邉章社長が「マクロ経済から金型業界を考える~生き抜くために」と題した記念講演会を行った。

従業員2020人、国内9・海外2拠点を擁する関東製作所(本社=東京都江東区)は、メインとする金型事業(ブロー成形、射出成形)、成形事業(射出成形180t~1800t)に留まらず、部品の加工・調達、加工機・協働ロボットの設計・製作など様々な事業を拡大し、6年間で売り上げ4倍という成長を実現している。さらには、特定業界・特定顧客依存からの脱却を図るべくデジタルマーケティングを導入し、コロナ禍の中でさらにDX投資を推進した結果、取り組みから2年弱で新規商談の創出10億円、新規受注1億2千万円の成果を上げた。このような「多角化」のベースには、次のような考えがあると渡邉社長は話す。

「マクロ経済を良くしない限り、ゼロサムゲーム(得失点の総和がゼロになる経済理論)となり、1社が勝てば、その裏側で5社が退場する形になる。分けるパイの大きさが一定であると、多くとる企業がでれば、必ず、貰えない企業がでてしまう。パイが大きくなれば、皆で成長していけるので、なぜパイを大きくできないのかを知り、パイを大きくする取り組みをできればと思う。金型という一定のパイを争うだけではなく、生き残るためには隣のパイも狙いにいく必要がある」。

そんな中で同社は、「設備投資」「DX投資」「人材投資」への取り組みに注力した。デジタルマーケティングについては、デジタルの世界での顧客探しは、金型、成形の知識は不要とした上で、「逆にデジタルの知識習得が必要であり、マーケティングの専任者を採用したが、プロではなく素人を採用し、教育した」と言及した。また、金型業界の現況を「金型は受注の波が激しく、受注予想が立てられない。経営が不安定。何もしなければ淘汰されてしまう」と概観し、投資に関し同社では5軸マシニングセンタやワイヤカット放電加工機等の設備は導入したものの、「製造能力増強よりも、需要創出のための投資に力を入れている」とまとめ、強調した。

▲講師を務めた関東製作所の渡邉社長

「人」に焦点あてた事業活動に注力

なお総会には、28人(出席者17人・委任状出席11人)が出席。開会あいさつで加藤丈詩理事長(カトーメテック社長)は、コロナ禍による影響について「昨年後半あたりからセミナーや勉強会といった対面活動ができるようになり、今年度はより皆さんに集まっていただき、長らく控えていたレクリエーション活動の再開も予定している」と参加を呼びかけた。議事では令和4年度の事業報告・各会計事項、令和5年度事業計画案および予算案等々5つの議案が審議、可決され、この中では、昨年7月に実施した「岐阜県立国際たくみアカデミーでの親子ものづくり体験行事」および今年2月実施の「岐阜県国際たくみアカデミー活性化検討会」など、他団体支援・交流事業、連携による新規人材の確保促進、事業計画案では組合員の増強、金型人材の育成・定着促進など、概ね「人」に焦点をあてた事業の研究・企画・実施への注力が見てとれた。また今回は役員改選期にあたり、第5号議案では加藤理事長はじめ副理事長3名・理事6名(新任2名・退任1名)・監事2名(新任1名・退任1名)計12名の就任が承認された。閉会に先立ち、来賓あいさつに立った岐阜県中小企業団体中央会組織支援課の高井和貴課長は、社会経済活動がコロナ禍以前の状態に戻りつつある一方で、「世の中の製品、サービスが値上がりする状況下で、企業の経営、活動は厳しい状況にある。多様なメンバーが参集、連携し、共通する課題や悩みについてともに解決していけるのが組合組織であり、今こそ、その機能が発揮されるべきではなかろうか」旨述べた。

▲新たな任期を務める加藤理事長あいさつ

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