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【ユーザー通信 245号 6面 】奈良 DMG MORI 第二本社/奈良商品開発センタ 創業地へ本社移転

ユーザー通信 WEB版

森雅彦社長会見
「奈良のハイポテンシャル」を強調
SAKI・マグネスケール新工場誘致
「旧24号線沿い(郡山IC~JR奈良駅)活性化」構想にも言及


DMG森精機は8月29日、奈良商品開発センタのお披露目会を開催し、森雅彦社長による設立趣旨等のプレゼンテーションおよび館内見学会を、報道向けに行った。

奈良商品開発センタの稼働開始を機に、DMG森精機は7月1日付で本社を名古屋市から奈良市に移転し、奈良と東京(グローバルヘッドクォーター/江東区潮見)の二本社制を導入した。

奈良商品開発センタはJR奈良駅徒歩1分の交通至便な隣地に設けられた。約3600㎡の敷地に地上6階建てビルを建設し、従業員約300人を擁する。

DMG MORIグループ最大の最先端研究開発センタとなり、5Gを使ったデジタル通信技術、AI、クラウドコンピューティング、デジタルツインなどのテクノロジーを用いたデジタル化、コネクティビティを含むDX構築を行う。

さらに、工作機械の要素技術、次世代複合加工機、Additive Manufacturing(3D積層造形)機、自動化システム、ビジョンカメラを使った非接触計測システム、次世代の切りくず・ クーラント・ミスト処理装置などの工作機械および周辺装置とそれらに搭載される制御ソフトウェア他、ファナック、東京大学、京都大学、東京工業大学、慶応義塾大学とのNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)プロジェクトによる研究開発「既存生産設備と協働可能な多能工自走ロボットによるダイナミック生産ラインの実現」といった、最先端のイノベーティブな開発実験を行う。

フロアマップは、3~5階のオフィスフロア(3・4Fが開発、5Fが奈良ヘッドクォータ・第二本社)の他に、1~2階に実験センタ(1Fが機械、2Fが要素技術開発)、6階にセミナールーム・レストラン・カフェラウンジを配置している。

建物のデザインは隈研吾建築都市設計事務所。隈氏らしい外観デザインが特徴的で、同氏も頻繁に現地に入り監修にあたったという。設計は服部建築事務所、施工は淺沼組といったこれまでもDMG森精機の仕事で実績のある地元事業者が担った。
メインエントランスには、DMG森精機のユーザー、協力企業62社による先進の金属加工技術により、有機的な木目柄に切削された920枚のアルミ材を用い、古都・奈良と調和する建築をコンセプトとした。そんな温かみのあるオフィスには13テーマ・5千冊の書籍が並ぶ本棚も陣取る。

京都・大阪・奈良の学生インターンシップの受け入れに加えて、電気、通信、エレクトロニクス、組込ソフト、コネクティビティ、ロボティクス、センサー分野からの経験者採用や同分野の技術者との交流を推進するこの拠点は、奈良工場(大和郡山市)と伊賀工場(三重県伊賀市)へ30分おきにシャトルバスを運行している。

DMG森精機では2025年夏の奈良事業所のシステムソリューション工場化への改装に伴い、奈良、伊賀両事業所の役割が大きく変わろうとしている。

森社長は、「奈良地区でのテスト加工や技術社員の勤務場所として、数年前から便利な土地を探しており、当初は学研都市(京阪奈丘陵に跨る広域都市)も候補だったが、やはり街の中で様々な人が行き交えるほうが良いと思っていたところ、銀行の紹介により、近鉄と奈良交通が所有し、しばらく用途がないこの土地を借地契約し建設に至った。建物自体は約60億円、設備した機械は常に20~30億円のバリューのある研究対象につながる投資を行った」と経緯を説明。

「JR奈良駅前は立地的に、京都駅から約30分、大阪(天王寺駅)からも約30分と至便であり、この地には大学が集積し、様々な電気系、機械系メーカーのOBらの居住も多い」ことから、今後、新卒に限らず、中堅・シニアエンジニアのキャリア採用など、通年でのリクルーティングに有利であり、「自分のオリジナルな技術を活かしたいと思う人材にとっても魅力的な土地」だと説く。

また、奈良事業所のシステムソリューション工場化への改装に加え、DMG MORIグループのSAKIコーポレーション(東京都江東区)、マグネスケール(神奈川県伊勢原市)の新工場を奈良に誘致、建設を計画。奈良事業所内または、いわゆる「旧・国道24号線」沿いの立地となることから、この郡山ICから奈良商品開発センタのあるJR奈良駅間の5~6㎞について、「奈良を代表するスタイリッシュな通り(ストリート)にしていきたい」との構想に言及した。

その引き合いに、京都市内のロームや島津製作所の所在周辺にふれたことから、おそらく、西大路通がそのモデルであろう。「奈良は京都に比べ看板や景観に対する規制が寛容であり、今のうちに旧24号線沿いの活性化に向けていきたい」と続けた。

これまでも、奈良の街並み散策も兼ね、土・日曜を跨いだ2週間ほど研修に訪れるユーザーも少なくなく、「世界中からお客様を呼ぶにあたり奈良という土地は大変魅力的であり、海外のお客様の中には『奈良へ出掛けたい』というシチュエーションだけでユーザーになっている方もいる。そういった面も今後は、さらに深めていきたい」とした上で、森社長は最後に「奈良は教育水準も高く、(奈良市内は)自然災害も少ない。これら構想も含め、少し変えていくだけで非常にポテンシャルがある。もっと自信を持っていい」と、総じて、奈良のハイポテンシャルを強調し、自らの出身地への思い入れがうかがえた。

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