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ユーザー通信239号 5面 【宇宙大特集】Space BD 『TSUKIMI』プロジェクト始動

ユーザー通信 WEB版

「テラヘルツ波を用いた月面の広域な水エネルギー資源探査」

NICT・東大・大阪府大・JAXAと共同PJ、新たな産官学連携の形を実現

「技術力、情報発信、産業界との接続を、成果の最大化に向け貢献していく」(永崎社長)

 

東京・日本橋の冬が宇宙で盛り上がった昨年12月、「TOKYO SPACE BUSINESS EXHIBITION」の会期2日目となる15日午前には、日本橋三井ホールのメインステージを会場に、「宇宙商社」のSpace BD(東京・日本橋、永崎将利社長)が、新たなプロジェクト説明会を行った。

Space BDは、総務省「令和3年度 情報通信技術の研究開発に係る提案の公募」の結果、「テラヘルツ波を用いた月面の広域な水エネルギー資源探査」の委託先に選定されたことを受け、情報通信研究機構(NICT)、東京大学工学系研究科システム創成学専攻、大阪府立大学、JAXAとの共同プロジェクト『TSUKIMI』(ツキミ)として、本格的に始動する。

ステージ上には、Space BDの永崎社長はじめ、NICT テラヘルツ研究センター 上席研究員の笠井康子氏、東大大学院学工学系研究科システム創成学専攻 専攻長の宮本英昭教授、大阪府大大学院理学系研究科の前澤裕之准教授(※リモート参加)、JAXA 研究開発部門 研究領域主幹の西堀俊幸氏が登壇し、全体像や詳細を説いた。宇宙に関する日本の第一人者が、これだけ勢揃いする機会は非常に貴重だという。

「月の水の在りかを地図にする」   

TSUKIMIとは、Lunar 「T」erahertz 「SU」rveyor for 「KI」lometer-scale 「M」app「I」ngを語源とするネーミングで、新たな産官学連携の形を実現する「月の資源探査」プロジェクトである。

国際的に進められている月の開発利用に関し、我が国がICT(情報通信技術)分野において戦略的かつ優位に推進していくために、総務省が推進する月面における水循環の実態を把握することにより、効率の良い資源獲得を行うことを目指す。要は、「月の水の在りかを地図にする」「水の地図」と言い換えられる。

テラヘルツ波とは電波と光の境界領域の電磁波であり、「水に敏感」「電波に比べて高周波数なため、センサの小型軽量化が可能」との特徴を有すことから、水資源探査には様々な手段が存在する中、月面の水・氷・土壌水分含有量などの構成物を高精度に推定できる。余談ながら、原理は全く異なるものの、食用豚肉の水分量測定(赤身では69%程度、脂質では16%程度の水含有量が検出)も、テラヘルツ波測定の特徴の一例として示されるそうだ。

観察と分析においては、水に敏感であるテラヘルツ波を利用し、月面をサーベイ(調査)。月面とサブサーフェス(表面直下)の氷や土壌における水分含有量の分布を高精度に推定する。月観測データのほか、実験室物性測定や独自の解析数理アルゴリズム開発が鍵となる。また、パッシブ(受動型)観測により、昼面・夜面の両面の観測を実現し、昼夜・季節による変動を得ることによって、月面の水循環の実態を把握する。

Space BDの永崎社長は、「プロジェクト名のTSUKIMIはきょう初めて公開された、素敵な、さすがというネーミングだ。月の水の地図をつくるということは、全てのベースになる、人類にとって大事な、大きなプロジェクトだと思っている。これに我々の持っている技術力、情報発信、産業界との接続を、オールSpace BDでしっかりと成果の最大化に向けて貢献していきたい」と意気込みを述べた。

「月科学・月資源工学推進コンソーシアム」設置、横河電機、高砂熱学工業など参画予定

また、我が国発の地球近傍宇宙における科学探査や持続的な経済活動のビジネスのモデルケースを追求する枠組みとして、「月科学・月資源工学推進コンソーシアム(仮称)」を設置。情報共有とアイデア発掘から月の科学・月の資源工学を推進、大小さまざまな月ビジネス群の創出を趣旨に、これに賛同した法人、無償を参加資格とし、参加企業・団体を募集中である。

なお、月面ミッションへの輸送の視点で役割を担うⅰspace、月面の水資源の開発や利活用について地上での知見を活かした役割を担う予定の横河電機、

拠点提供とアミューズメント展開に関与する東京ドームに加え、高砂熱学工業、千代田化工建設が参画予定企業に名を連ねている。

写真/左から、西堀氏(JAXA)、笠井氏(NICT)、宮本教授(東大)、永崎社長(Space BD)。
宇宙に関する日本の第一人者が勢揃いする稀な機会となった

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