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ユーザー通信239号 4面 【宇宙大特集】OSG×アストロスケール AAA(トリプルエー)対談実現!

ユーザー通信 WEB版

OSG 大沢二朗常務 × アストロスケール 岡田光信創業者兼CEO

 

「宇宙開発の大問題とビジネスチャンス」

オーエスジー(本社=愛知県豊川市、大沢伸朗社長)の大沢二朗常務が2月8日、なごのキャンパス(名古屋市西区)での中部ニュービジネス協議会の会員交流イベント「宇宙開発の大問題とビジネスチャンス」(全面オンライン開催)の第2部に登壇し、アストロスケール 創業者 兼 CEOの岡田光信氏との対談に臨んだ。

アストロスケールは、宇宙開発の大きな妨げとなっているスペースデブリ(宇宙ゴミ)問題に立ち向かう業界屈指の宇宙ベンチャー。

今から5年前、OSGの名を冠した微小デブリ観測衛星『IDEA OSG 1』(イデア オーエスジー ワン)は、ロケットの不具合により打ち上げ成功には至らなかったものの、オーエスジーはこの事業のメインスポンサー(2015年)を務めたのを機にアストロスケールに出資、その後も宇宙部品の供給を続けている。

そして昨年3月には、オーエスジーが手掛ける精密部品を搭載した人工衛星『ELSA-d』(エルサ ディー)が、ロシアのソユーズロケットで打ち上げられ、軌道投入に成功した。

第1部では岡田氏が基調講演に立ち、例えば、宇宙開発の問題点や創業の志を、次のように、わかりやすく語った。

「本日現在、約4万個の物体が地球の周囲を回っており、そのうち人工衛星が4300機。つまり、宇宙空間にある物体の9割がデブリである。70年前までの宇宙にはゴミがゼロだった。たくさんの衛星が打ち上った結果、デブリが増えている。使い終わった衛星やロケットの上段(海に落下する第1段以外)はそのまま回っており、それらの衝突や爆発によりできた破片がまたデブリとなり、一度回り始めると数百年落下してこない、これが問題だ」。

「このように、宇宙業界はこれまで使い捨て文化だった。これを、自動車のロードサービスや他の業界のようにメンテナンス、アフターサービスを提供する『軌道上サービス』として世界に先駆けて事業化し、宇宙の基盤インフラにしようと考えスタートした」。

一方、第2部で大沢常務は、自身に課していることとして、まず「想像から創造」と挙げ、2015年に自社組合員向けのプレゼン時に使用した資料「オーエスジーの10、20年後を考えたことありますか?」から抜粋し、歯科業界やⅰ-Phone、自動車の未来(EV)といったパラダイムシフトを紐解きながら、「今ある情報から想像=創造する」を説いた。

その中では、昨年末から進む最新の社内ベンチャー「Cort-X被膜」の立ち上げについても、一部言及。現在、モーター用磁石、電子デバイス、ウェアブル医療機器、時計部品にニーズが集中する、少量多品種ベースにてコーティングを行う市場実績がある、スイスのベンチャー企業との協業によるものだという。

さらに、「AAA」(トリプルエー/ACutual Place、ACutual Parts、ACutual Situation )=三現主義(現場・現物・現実を重視し、問題の解決を図らなければならないという考え方)、「どんな小さなイノベーションも見逃さない、自分自身で調べてみる」と挙げ、大沢常務曰く、「宇宙から一転、どちらかといえば『泥臭い話』だが、共通点は多い、根底はいっしょ」だとまとめ、二人のトークセッションへと移った。

これまでも互いの話を聴き、様々な場面で刺激を受け合い、親しい間柄の大沢常務と岡田氏の対談では、先の基調講演でも「行動」「現実」について自身の課題・実現方程式としてふれていた岡田氏は即座に、大沢常務のトリプルエー重視の考えに呼応、「経営者は一次情報を取らなければいけない」と強調した。

最後に、あるべき姿の考え方、物事の評価方法について、岡田氏は「笑われたら、勝機があると思え」、大沢常務は「皆に反対されたものこそが、実は大ヒット製品になっている」と、それぞれ表現した。

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