news-膜表面の粗さを改善した緻密かつ高硬度な皮膜を実現、最大20μmまでの厚膜が成膜可能 日本アイ・ティ・エフ
膜表面の粗さを改善した緻密かつ高硬度な皮膜を実現、最大20μmまでの厚膜が成膜可能 日本アイ・ティ・エフ
日本アイ・ティ・エフは、アーク放電を用いた新型のDLC(ダイヤモンド・ライク・カーボン)膜コーティング装置『MF720』を開発し、今年6月より装置の販売および受託加工サービスを開始している。
DLC膜は摩擦抵抗が少ない膜として知られ、各種工具、金型、機械部品、自動車部品の分野で広く使われている。
DLC膜の中でも、アーク放電を用いた水素を含まない膜は、ダイヤモンドに次ぐ硬さからセラミックなみの硬さまで硬度の制御が可能で耐久性に優れているが、一方で膜表面が粗く、コーティングした部品と組み合わせた部品が摩耗してしまう場合があるため、成膜後に仕上げ研磨が必要だった。
MF720は、膜表面の粗さを改善するため、成膜中に発生する不要な粗大粒子と成膜成分を磁気フィルターで分離し、 成膜成分のみを基材側に導くフィルタードアーク方式を採用している。
従来のフィルタードアーク方式は、フィルターの部分が大きく、複数のユニットを取り付けて量産性を高めるには不向きであり、またメンテナンスも非常に手間を要した。
同社ではこの点を重点的に研究し、コンパクトでも粗大粒子の捕獲効率の良いフィルターを開発、基材を出し入れする扉にも取り付けることができ、内部の清掃も容易な構造としメンテナンス性を向上させた。
これにより、粗大粒子が少なく、欠陥の少ない緻密な皮膜を成膜できるようになり、膜厚1μmあたりの表面平均粗さを、従来比の1/6である0・02μmまで改善した。さらに、コーティングした部品の延命化にも大きな効果をもたらしている。
また、MF720はカソード材料供給機構を備え、最大で膜厚20μmまでの厚膜が成膜可能で、同時に開発した密着層の成膜プロセスと合わせ、膜と基材との密着性にも非常に優れている。
DLC膜の膜硬度も15~75GPaと広い範囲での制御が可能で、さまざまな用途に適用できる。
装置の有効成膜エリアは直径720㎜×高さ750㎜と大きく、量産に使用できるサイズとなっている。
今後は小型装置のラインアップを充実していく予定。
機械部品、自動車部品を製造する内製メーカー向けに装置の販売を6月から開始しており、併せて順次、受託加工サービスを受け付けている。
2021年11月25日