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ユーザー通信231号 1面:Space BD 永崎将利社長独占インタビュー 「どこを突っつけば宇宙産業はもっと広がるのか」

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Space BD 永崎将利社長独占インタビュー 「どこを突っつけば宇宙産業はもっと広がるのか」

昨年11月、経営体制の強化および今後の事業戦略に関する発表を行った、Space BD株式会社(以下、Space BD/東京・日本橋室町)は、国際宇宙ステーションの利活用を中心に、あらゆる産業のプレイヤーへ宇宙の産業化を促進していくためのサービスを展開している(ローンチサービス事業、宇宙機器輸出入事業、教育事業、宇宙利用事業)。

そんな同社を率いる永崎将利社長の野望、野心とは「日本発で世界を代表する産業と会社をつくる」ことであり、自社を『宇宙商社』と名乗る。本紙ではこの度、機械工具(生産財)業界紙では初となる永崎社長への独占インタビューを敢行。今後数回にわたり対談形式で、「なぜSpace BDが『宇宙商社』なのか?」を紐解いていく―。

【聞き手=本紙・植村和人】(敬称略)

 

―小紙のカテゴリーである製造現場で使用する生産財と呼ばれる工作機械や切削工具は、多かれ少なかれ、ほぼ全ての産業に関わっているといっても過言ではない。決して目立ちはしないものの、ねじ穴ひとつ、1個の部品と、何かしらに関わっているのが生産財という中で、当然、宇宙産業、宇宙ビジネスにもこれからさらに関りが深まっていくはずです。

永崎 宇宙ビジネスのチャンスは無限大といえど、何をどう突っつけば動いて利益になるのか、まだ本当に分からないので、一見、目先のビジネスには直結しないような打ち合わせからも新しいアイデアが飛び出したり、いかに質の良い情報を集め、事業化するかとなれば、多分、それが「商社の社長」の仕事になるのだと思います。

昨年11月の記者会見でも話しましたが、戦後から高度経済成長に至るあの隆盛を経て、現在の日本をつくり上げてきたのは、間違いなく、日本ならではの「商社」という機能、ものづくり企業さんとの役割分担があったからこそだと確信しています。

 

―ですが時代的には、あるいは世界的に見れば、商社機能とは「中間」「ワンクッション」=時間的にも利益的にも「無駄じゃないの?」といった、どちらかといえば淘汰、排除されがちなイメージが強い中、むしろ、もの凄く評価している永崎社長の思い、姿勢に感銘し、今回の直接インタビューに臨んだわけです。

機械工具、生産財業界においてはまだまだ商社の機能、存在は大きいですし、それに、かつて私が長らく在籍していた出版・書店業界でも、商社の存在が未だに幅を利かせています。

ちなみに、世間ではよく、「航空・宇宙産業」と纏めた表現が見られますが、私はこの括りに違和感があります。航空と宇宙って全然違うと思うのですが、例えば、セミナーや講演会などでも「航空宇宙〇〇〇」とタイトルされていても、いざ聴講すれば99%が航空の話だったりする。

永崎 そうですね。

 

―だから、これだけ宇宙というカテゴリーがビジネス化し、広がる中では、もう航空と宇宙は完全に分離すればいいと思いますが。

永崎 それに、経済という切り口で宇宙を見ていった時、宇宙にはまた全然違う顔があります。ただ、まだまだメディアに出てくる宇宙産業とは新しい技術や天文学的な話題が多いですが、私は全然違う「リアル」な部分を見ているので、そこには課題だけでなく、もちろんチャンスもあるわけです。
先日参加したあるイベントで、「いま宇宙で儲かるフレームワークや勝ちパターンはあるのか?」と問われましたが、第一声、「そんなものはありません」と答えました。勝ちパターンがつくられるのを待っていては、日本は世界に遅れをとってしまうと思っています。

米国も含めて、どうすればビジネスになるのかは誰も分からない、かといって上手くいってから参入すればもう遅いわけだから、いま、何を根拠にして参入していくのか、本当にビジネスとして考えるのかが、それこそまさに、思想の表れだと思います。

「2面に続く」

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