ユーザー通信225号 第8面 シリーズ アフターサービスの現時点 三井精機工業「精度の三井にカムバック!」
シリーズ アフターサービスの現時点
三井精機工業「精度の三井にカムバック!」
三井精機工業(本社=埼玉県比企郡川島町、加藤欣一社長)では今、マシニングセンタの「改造・移設が非常に増えている」という。
そのベースには、同社の機械点検サービス、特に、DBB(ダブルボールバー)のデータ解析から様々な問題点を明確化(結果をレーダーチャート化)できるという他社の点検項目にはない同社独自のメリットがある。
新型コロナ禍の今年、その申込件数は例年に比べ「月間で約10倍の伸び」だと同社営業本部 営業副本部長の古川直哉参与は話す。そのバックボーンや三井精機の「アフターサービスの現時点」について、古川参与は次のように続けた―。
―コロナ禍でのアフターサービス
古川 4、5月のコロナ感染拡大が最初に酷かった頃、営業の行き来ができない、お客様も商社様も不要不急でなければ往来できないとなったが、基本、保守サービスでの訪問は憚られないので、営業本部としては、当社のこういった機械点検プログラムを今一度アピールし直そう、サービス部にもこれまでの流れではなく「もっと、本格的に取り組もう」と号令を掛けた。今まではどうしても片手間のイメージが拭えず、サービスの「やらされ感」は否めなかったが、営業がとってきた仕事という認識だけではなく、サービス部からも、もっと浸透させようとの思いがあった。
―「保全」としての予算
古川 全体の仕事量が減っている中、機械点検サービスを強化したことで、従来なら月間1~2件のところ、現在では約20件にのぼっており、おかげさまで、11月~来年2月はサービス部の繁忙で手が回らないほどの状況にある。
お客様(ユーザー)の生産現場は、新品のための予算は取れていても、今年のように途中で景況が悪化すれば、その予算も膠着状態となったりするが、「保全」としての予算はまた別であり、逆に新規で設備しない分、「延命処置」に対する予算は、こういう時には間違いなく動く。ただ、当社の点検プログラムは予防保全・現状把握のための、いわば機械の「健康診断、人間ドック」であり、修理・調整を伴うものではない。
―予防保全に至るきっかけ、いきさつ
古川 リーマンショック(2008年9月)より遡ること3年前、複数の大手自動車メーカー様の保全部門から、「機械の悪い部分を事前に検知ができないか」といった予防保全的な投げ掛けがあったことに始まる。「今こういう状態なので、この部品を近いうちに交換したい、となれば予算がつく」と、来期予算をとった中で日程を決め、計画仕事として修理すれば、生産にダイレクトに影響する「突発停止」の減少につながる。
保全の予算は、工作機械メーカーのいわゆる「修理代」が予防保全により減らすことができ、かつ突発停止が減れば、予算として通っているので「故障」として目立たず、イメージが全然違ってくる。その上、突発停止が減るということは、人の管理もしやすくなる。こういった「生産現場の突発停止による予算を減らしたい」というお客様の考えに基づいた立案が、我々メーカーの考える「いかにお客様に安心して使っていただくか」に合致し、互いにウイン、ウインとなり、予防保全が営業ツールとして、多くのお客様に提供できるようになった。
―点検項目と測定結果
古川 当社点検の「売り」であるDBB解析は、心電図検査と同じで出力される波形を測定していき、何ミリピッチで出ている、どういう波形が入っているので、これはこの軸のこの部分、ボールねじやリニアガイドなどが傷んでいると説く、自信のある解析をしている。
機械を分解することなく、点検項目は、軸のねじれ・直角度、ATCアライメント~クーラー動作確認、ATC・APC動作確認等に至る16項目が決まっており、実施した担当者の技量に左右されず、それぞれの点検項目を外周に並べ、点検結果をレベル1~5で表す(レーダーチャート化)。5点満点でレベル3の「使用には問題ないが、劣化が見られる」をひとつの区切りとし、3を切れば、それなりの手を入れる(修理の検討、機械の使用を控える)目安としている。所要時間は、機種によるが3~6時間。料金は国内の場合は機種に関係なく一律の固定料金(交通費別途)。
―機械点検のアピール強化での成果
古川 現在に至るまで、毎年1、2回のペースで機械点検を継続されている大手のお客様は結構あるが、中小のお客様では途切れがちだった。そんな中で今年、あらためてアピールしたところ、機械点検をすれば、お客様も「薄々は感じていた・・・」問題点が「数字」として表れ評価レベルも明確になることにより、別の案件も舞い込んできたりする。
また先日、ある大手のお客様でのまとまった新規設備案件では、すんでのところで競合メーカーを退け、当社が受注する「決め手」となった。先方(大手顧客)担当者様からは、「こういったサービスは、もっと早いうちにアピールしておいてよ」といわれたが、これは、大手様の生産技術ではこういったサービスが結構、重宝されているということ。
さらには、当社の工作機械は30年、35年とあたりまえに使っていただけるのだが、金型加工か部品加工なのかといった、お客様それぞれの加工条件が大体わかる中で、「部品加工だから目立たない傷み」や、「穴あけや位置決めだけではなく、例えば、コンタニングを含めた形状加工が入ると、実はボールねじに問題が出たり」といった、新しい機械へのフィードバックにもつながる。そういったまた別のデータ取りの側面もある。そして、この機械点検サービスの存在感が増すことが、社内の再教育にも功を奏している点も付け加えておきたい。
―将来的には
古川 Webで繋いでの機械診断などいろいろトライ中で、その流れがひとつのデータとして固まれば、いまは定期的な健康診断だが、今度はある程度、機械の健康情報が常時入ってきて、何か異常があった時に点検し確認することになる。また、点検だけではなくもう少し進めて、切削油の管理・交換など皆が避けがちな仕事を総合的にパッケージ化できれば面白いと考えている。
いずれにせよ、加工精度を維持し、寿命を延ばすための点検は、「精度の三井にカムバック!」に不可欠であり、当社の工作機械を「いかにお客様に安心して使っていただくか」が最も大事になる。
2020年11月18日