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ユーザー通信 243号 3面:2022山善親交会

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今期は売上高で過去最高更新(5300億円)見込む 持続的成長に向けた400億円の投資枠を設定(新3ヵ年中経)

  山善(本社=大阪市西区立売堀)は5月17日、帝国ホテル大阪にて「2022年 山善親交会」を開催した。

主力仕入先277社・278人が参集するなか、長尾雄次社長があいさつとともに、5月13日付で発表した22年3月期(第76期)決算のポイント、および今年度(23年3月期/第77期)の取り組みについて述べた。

売上高3年ぶり5千億円台復活、利益ともに過去2番目の高水準を報告(22年3月期決算)

22年3月期の連結業績は、売上高5018億7200万円、営業利益171億3300万円、経常利益170億9300万円、親会社株主に帰属する当期純利益120億2300万円。

長尾社長は、「3年ぶりに売上高5千億円台に復活し、売上高、利益ともに過去2番目の業績となった」とした上で、「事業部別の売上高では、生産財関連事業が第2四半期を底に順調に回復しており、消費財関連事業では家庭機器事業が新商品の開発力が奏功し過去最高となった」と報告した。引き続き、長尾社長により語られた内容から生産財関連を中心にピックアップすれば、概ね、次のとおり。

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生産財の事業部別に概観すれば、国内機械事業は、自動車産業で脱酸素化等に向けた設備投資が徐々に増え始め、半導体製造装置や建設機械の部品加工向け等の工作機械受注が伸長した。

国内機工事業では、切削工具が伸長し、補要工具や測定工具等の販売も底堅く推移。生産・物流現場等の環境改善機器やマテハン機器、自動化設備等も好調に推移した。

海外生産財事業では、北米・中国・ASEAN支社で自動車・半導体産業等を中心にした設備投資、台湾支社では半導体やIT機器産業におけるEMS企業の設備投資が活発だった。海外4支社ともに工作機械販売に加え、切削・補要工具やメカトロ機器等の販売も好調に推移した。

今期から2025年3月期までの新3ヵ年中期経営計画「CROSSING YAMAZEN 2024」(価値をCROSSINGさせることによって生まれる、新しい価値を求めて)がスタートした。前中期経営計画で山善グループの総合力を高めてきたが未だ道半ばあり、いま一度、クロッシングをさらに強く進め、本物に仕上げていく決意である。

顧客を取り巻く2030年の世界観を想定し「グリーンビジネスの拡大」、「デジタル化による顧客価値の最大化」、「働きがいのある職場の実現」、「持続可能な調達・供給の実現」、「透明性のあるガバナンス体制の確立」といった5つの重要課題を具現化するため4つの戦略として「顧客密着戦略」、「トランスフォーム戦略」、「デジタル融合戦略」、「人財マネジメント戦略」を打ち出した。

今期(23年3月期)の連結業績見通しは、売上高5300億円、営業利益160億円、経常利益160億円。売上高で過去最高更新(5263億6400万円/19年3月期)を見込む。このうち、セグメント別の通期売上高では、生産財事業部の国内機械事業部が890億円、国内機工事業部が1730億円、海外計が930億円で合計3550億円を計画。

グリーン戦略で脱炭素経営をサポート

昨年4月1日に「グリーンリカバリービジネス」を立ち上げ、グリーン戦略で最も注力しているのがPPAモデル事業(DayZpower=デイズパワー)。仕入先工場や量販店等の屋根や敷地に「山善負担」で太陽電池を設置し、クリーンな電力を提供する。電力単価が異常な上昇局面を迎えている今こそ、検討に値する再エネ電力の調達である。また、08年から14年間継続している「グリーンボールプロジェクト」は今期よりフルモデルチェンジし、脱炭素経営をサポートする。

3年ぶり「どてらい市」をリアル開催、実施中

『2022年どてらい市』は、感染症防止対策を徹底した上で、3年ぶりにリアル開催することを決定、実施中。新たに開発した来場者事前登録システムを導入しながら、九州(4月開催済み)を皮切りに12月まで全国18か所で実施予定。

新中期経営計画の成長投資として、今後3年間で持続的成長に向けた400億円の枠を設定し投資を行う。内訳は、来年4月に本格稼働する「ロジス新東京」や自動化設備の導入等、物流設備などの設備投資に100億円。DX戦略・システム投資には100億円を投じ、データに基づいたマーケティングで、新たなビジネスを創出する。M&Aや新規事業等の事業投資には200億円を計画している――。

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続いて、メーカーを代表してTHKの寺町彰博社長は、「日本はすでにアジアの盟主ではない、大きな勘違いであるとの認識が必要。平均給与で韓国に抜かれ、もうすぐ台湾にも抜かれるであろう。これまで『日本的』と評されてきた『おもてなし』『クオリティ(の高さ)』『石橋を叩いて渡る』といった考えは、今の時代においては捨て去さらなければならない。もっと大胆な考え、行動が求められる」旨等をあいさつとした。

▲長尾社長は新中経に臨むにあたり引き続き「CROSSING」をテーマに選んだ(「シン・クロッシング」とも呼ぶべきか?)

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