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ユーザー通信203号 2019年スタート! 積極投資のハイライトは「開発のスピ ードアップ、マーケティングへの注力」

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タンガロイ(本社=福島県いわき市好間工業団地)が、多国籍企業グループのIMC(International Metalworking Companies B.V.)にグループインして今年で11年目を迎える。この10年間でのタンガロイ自身における変革や日本市場の変化を、木下聡社長に聞いた―。

 

開発投資こそが企業永続の道

―この10年間での最大の変化は

木下 タンガロイが大きく変わったのは、やはり、開発に積極的に投資を始めたということ。近年では他社に比べ、より多くの新製品の発売を続けているが、開発こそが、企業が唯一、永続できる道ではないか。それには当然、過去のISO規格ではない、ほぼ全てが開発対象となるので、形状の制約などもなくなった思想で開発し、タンガロイにつくれる技術があるからこそ、マッチングし、成長できたのだと思う。

 

―そういったスタイルはいつ頃から

木下 2008年にIMCグループ入りし、私が社長に就任した14年にはベースができており、技術出身(08年当時は材料開発の部長)なので、「お客様が求める良い製品を、いかに短期間で開発するか」ということに専念してきた。

 

―昨年の新製品発売件数は

木下 約45件。一昨年が約30件、その前年が43件。それがお客様の求めるものであれば拡販できるし、求められなければ衰退していくものもある。

 

―市場性とのマッチング率は

木下 失敗といえるのは10%未満ではないだろうか。そもそも失敗をリスクとは考えていない。広い国、広い産業に向け販売しているので、ある国では売れ、ある国では芳しくない商品があるのも事実だが、そんな浮き沈みを見据え販売国を増やしているし、産業も自動車だけに依存しないようにしてきている。
例えば中国リスクがあっても、製造販売業としては他の国でリスクヘッジができる。自動車産業が衰退してきても他の産業でリスクヘッジするというように、やはりテリトリーを広くすることが奏功している。

 

 

日本人を配置せず現地人がローカルに売る

―10年前に比べ販売国はどれだけ広がった

木下 3倍は広がった。いま27ヶ国に現地法人を持っているが、以前は、欧州であればドイツの1社が全てをカバーし、どちらかといえば、日本人が社長を務め、現地の人を使い、日系メーカーをメインに販売していたが、いまは各国に日本人をほぼ配置せずに、「現地の人がマネージメントし、現地の人がローカル(の企業・人)に販売」している。
これにより、新商品の売れ行きがすごくスピーディーになった。各国の異なるマーケットやトレンドの情報も入るので、そういったノウハウもIMCグループに入って得た面が大きいと思う。

 

―最も浸透している新製品

木下 まず、かなり注力したのが転削工具で、かつてのタンガロイは旋削工具が得意だがミリングは弱かった。そこを急激に開発品で補強した現状がある。旋削を落とそうとしているのではなく、弱い方面のアップに軸足を置いて臨んできた。

 

日本市場で加速度的に高送り加工が浸透

そんななか、日本市場でいま一番浸透しているのが、高送り工具(HIGH‐FEED MILLING/ハイフィード ミリング)で、これはタンガロイが世界で最も早くコンセプトをつくったという自負がある。
そのレパートリーをますます拡充している剛性が高い工具だが、機械が小型化するなか、切り込みを落として送りを上げる加工は、いまの世の中に非常にマッチしている。
お客様にわかりやすいコンセプトであり、使っていただければ、加工能率が確実に上がることから、日本のみならず、世界中で浸透してきている。コピー商品等も出現してはいるが、やはり「先駆者」として、ますますアップグレードを続けている。

―その傾向への加速度はいつ頃から増した

木下 5~6年前か。当初のコンセプトは10年ほど前にはあり、海外では販売網を整備すれば早く浸透したが、日本では海外に比べると、工具の切り替えがなかなかスピードアップしなかった。
だが、景気が良くなり、IT等の発達によりデータベースによって、どういった加工がコストダウンになるかを、日本のお客様もわかりはじめてきたうえに、我々もそういったプレゼンを始めたのがその頃(5~6年前)だった。

 

―今後の日本市場で浸透すると見る製品

木下 いま注力しているのが、穴あけ工具と溝入れ工具で、基本的には、タンガロイが昔弱かったところを補強しようとしており、それに対する新しいコンセプトの商品が結構、市場に浸透し始めている。俗に「自分の弱い部分は自分が一番よくわかっている」というが、そこを開発で補強していくという流れで、先述のとおり、ミリング工具はフルラインナップができ、ほぼ補強が完了、解決したので、他メーカーに比べてもアドバンテージがある。

 

―こう見ればさまざまなターニングポイントが5~6年前だった

木下 BtoBなので、従来はマーケティングへの注力が不足していた。お客様にどう理解していただけるかといったプレゼン、工場見学やデモ加工など、開発、製造、販売だけではなくマーケティングにも力を入れ、人を増やしていった。

 

 

売上高の5%を開発に投資

―開発の予算と人員の比率

木下 売上高の約5%が開発費用。それが多いか少ないかといえば、昔のタンガロイに比べればはるかに多い。売上高が伸びているので、開発のスピードを上げるためのシミュレーションにもかなり投資をしている。また、人員としては全従業員の約10%が開発者。

 

―開発人員を集めるのは難しい

木下 ただ、大卒者の新入社員は目標通りに採用できている。福島県(いわき)に本社があり、研究の中核もあるということで、意外と、東北の大学から来てくれている。

―日本市場のIMCへの伝え方

 

木下 世界のなかで日本が優れているのは、自動車と工作機械。そのマーケット情報は日本で得て、開発し、世界中に、特殊品もツーリングサービスも含め、タンガロイ製品として、発信している。

 

 

通販伸長するなか「工具は『使い方』が大事」

―新しいコンセプトのタンガロイ製品を「売る」理解

木下 タンガロイからの発信や、世の中のトレンドを理解している特約店様は伸びている。「世の中は変わってきているのですよ」というメッセージをどんどん発信させていただいているので、かつてのように、「これを売れば、ユーザーが勝手に使ってくれる」ではなく、効率的にコストダウンできる使い方をユーザーに教示しないといけない。
通販が伸びてきているのは事実だが、「工具は『使い方』が大事」なので、そういった部分にマーケティング活動として費用をつぎ込んでいるなか、販売店様が、もちろんユーザー様を伴った工場やセミナーに来ていただけるのは、非常にありがたい。

 

―グループ内での競争とシナジー

木下 それぞれが自社で開発チーム、製造工場を持ち、市場では完全に競合他社。世界的なマーケット、トレンド情報をもとに、コンセプトは一部共有しながらも、それをどう扱うかといった「路線」は別。
IMCグループで世界の切削工具シェアは約30%なので、それを分け合っても何のメリットもない。それよりも残りの7割を取りに行くアクティビティをもった方が良いという考え方。

 

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