山善が決算発表 今期は増収減益を予想

山善(本社=大阪市西区、岸田貢司社長)は、2025年3月期(2024年4月1日~2025年3月31日)の連結決算を発表した。売上高は5161億2600万円(前期比1.8%増)、営業利益は95億3500万円(同3.6%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益は78億4500万円(同20.9%増)。
同社を取り巻く事業環境として、国内においては一部自動車メーカーの生産停止の影響により、関連製造業の新規設備投資の抑制がみられた。また、半導体産業ではAI・パワー半導体への投資が期待されたが、設備投資は踊り場の状態が続き、全体として厳しい状況となった一方で、人手不足対策として自動化・省人化へのニーズは様々な産業で高まりを見せた。国内の個人消費については、様々な分野の商品やサービスの値上げに賃金の上昇が追い付かず、節約志向や商品の選別傾向が継続した。
生産財関連事業売上高は前期比1.4%増の3332億5百万円
生産財関連事業について、切削工具等の消耗品に関しては、一部自動車メーカーの生産停止等の影響を受けたものの、様々な作業用品や測定・分析機器等の販売が好調だった。また、人手不足が社会課題となる中、自動化需要によるメカトロ機器やマテハン設備が好調に推移し、さらに省エネ機器や環境改善機器等の売上も好調に推移した。
営業活動に関して、機械の販売においては生産性向上に寄与する高付加価値設備の提案等に積極的に取り組み、切削工具等の販売においては、自社ECサイトを開設した他、加工改善や治具等の提案強化に努めた。このほか、脱炭素や労働負荷軽減・労働環境改善をテーマにした商談会を各地で積極的に開催し、製造現場の課題解決、需要喚起を推進した。また、展示会等を通じて協働ロボットを活用した自動化ライン等のソリューション提案を精力的に行い、顧客接点を増やす取組みを行った。
海外生産財事業は、北米支社では医療・航空・宇宙産業向け高付加価値設備の売上が堅調に推移し、前年を上回る実績となった。台湾支社では、主要産業である電子・半導体産業等の需要が回復基調にあり、当期の売上は前年を上回った。中国支社では、内需型産業向けの売上が増加したものの、輸出型産業向けの売上が引き続き低調であり、前年と同水準となった。アセアン支社では、他地域からの生産移管や生産拠点の移設への対応を行うなど、新たな設備需要を取り込み、また半導体業界等の設備投資の動きもあり、前年を上回る結果となった。
これらの結果、生産財関連事業の売上高は3332億500万円(前期比1.4%増)となった。
前期比で住建事業は増、家庭機器事業は減
一方、消費財関連事業においては、住建事業は、空調設備の売上が好調に推移し、さらに消費者の節約志向に対応した高付加価値商材の提案に注力した結果、給湯器等の販売も堅調に推移した。また、非住宅分野の開拓にも積極的に取り組み、カーボンニュートラル対応及び光熱費削減へのニーズに向けて環境商材と施工をセットにした設備改修提案を強化したこと等により、販売が好調に推移した。その結果、住建事業の売上高は786億2300万円(前期比9.4%増)となった。
家庭機器事業は、原材料や電気・ガス価格の高騰、商品やサービスの価格上昇等による消費者の購買意欲の落ち込みが売上高に影響した。一方、プライベートブランド商品では消費者ニーズを捉えたスピーディーな企画・開発とラインアップの強化に取り組み、SNSや各種メディアを活用した情報発信によってYAMAZENブランドの浸透を図った結果、調理家電、AV家電、インテリア商品等の販売は堅調に推移した。また、販売チャネルの拡大を狙った法人・個人事業主向け自社ECサイト「山善ビズコム」においても、売上高・会員数が順調に伸長した。その結果、家庭機器事業の売上高は1008億8300万円(前期比0.2%減)となった。
今後の見通しについて、米国の保護主義による関税や貿易政策は、世界経済や金融市場等に多大な影響を及ぼし、以前にも増して経済の不確実性が高まっており、製造業におけるサプライチェーンの再編や生産拠点の移転・分散によるリスク回避、さらに経済変動がもたらす所得変化による消費行動の変容など、様々な動きが顕在化してくると考えられる。このような事業環境の中、山善の生産財関連事業では、技術専門性と世界的なグループネットワークを活かし、生産現場が抱える課題を解決するための提案に果敢に取り組んでいく。また、消費財関連事業でも、物価高騰やエネルギー価格の高止まり等による住宅設備や生活用品の購買行動への影響が懸念されるが、快適な住環境の整備やライフスタイルの充実に向けた新たな商品やサービスの提案を加速させ、2030年企業ビジョンである「世界のものづくりと豊かなくらしをリードする」を実現していく。
これらをふまえ、今期(2026年3月期)の業績見通しについては、売上高5300億万円(前期比2.7%増)、営業利益90億円(同5.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益70億円(同10.8%減)を予想する。
2025年5月14日