最新セミナーレポート『サンドビック・コロマント・センター』【ユーザー通信268号】
『サンドビック・コロマント・センター』の最新セミナーをレポート
ステップテクノロジーカッターなど「EVパーツの最新ソリューション」を提案(講習、実削加工)
「アルミ合金加工の使用量が飛躍的に伸長、加工改善による利益の創出が必須」
サンドビック・コロマント(名古屋市西区、髙宮真一カンパニープレジデント)の、6月12日に開所した「サンドビック・コロマント・センター」(名古屋市中川区)では、様々なイベント、トレーニング、プロジェクトが企画されており、6月は、最先端切削工具と加工をサポートする各ソフトウェアを融合した次世代のソリューションを紹介する「DX実削体感イベント」を、そして7月には、EVパーツの最新加工ソリューションを、中空シャフト編とバッテリーケース/モータハウジング編の2本立てで、想定ワークの実削を交えて紹介する「EVパーツ加工セミナー2024」を開催し、連日多くの受講者が訪れている。
EVパーツ加工セミナーでは、世界生産で拡大するEVパーツの最新加工ソリューションについて、同社技術担当者を講師に各3日計6日のスケジュールで実施。このうち、7月31日のバッテリーケース/モータハウジング編をピックアップする。
セミナーでは、世界での脱炭素社会への取り組みが加速する中、自動車生産の現状と見通しを分析。世界の自動車生産はEV車やハイブリッド車の需要が拡大する中、軽量化への対応が不可欠となり、従来の燃焼型エンジンに比べ、アルミ合金加工の使用量が飛躍的に伸長していることから、「アルミ合金加工は、加工改善による利益の創出が必須となる」と強調した。
次いで、アルミ合金加工でのバリ取り等の課題解決策として、新規開発したステップテクノロジーカッターについて、概ね次のように説明した。
径方向・軸方向の刃先位置を切込み量と送り量にあわせて1枚ずつ異なる位置に最適配列した構造としたことにより、「1刃あたりの切込み量を極小とし、さらには径方向の切刃位置をテーブル送りに最適化することで、高い送り量でもバリとコバ欠けを抑制する」との特徴を紹介し、ステップテクノロジーを搭載した3種類のM5シリーズをアピールした。
続いて、自動車生産現場での自動化やEV化が加速する中、ガスケット材が粘性の低いリキッド状に変化し、塗布される表面への滞留性を高めるために、表面粗さの新たな定義が必要とふれ、従来の上限のみの規定から、新たな定義として、面粗さに上下限のリミットが設定され、クロスハッチが求められているとした。
この解決策として、ステップテクノロジーを搭載したM5B90に、Pattern insertと呼ぶクロスハッチを生み出す切刃を追加したことで、バリを極限まで抑制するほか、工具寿命を改善するなどのメリットを、具体的な加工事例を通じて解説した。
この後、バッテリーケースの実削加工やソリッド工具の紹介が行われた。また、今回の新製品開発の経緯についての質疑に対しては、「持続可能な脱炭素社会実現のため、EV車等の普及・進化に伴う加工ニーズに対応するとともに、グローバル市場で実績ある当社の技術力の成果を示し、差別化をアピールし、産業界の発展に貢献していきたい」と応答した。
なお、次回は9月に、「ギアミリング加工」の実削加工セミナーを予定している。
2024年8月23日