ユーザー通信 248号 1面-2面 :大規模リニューアルしたダイフク『日に新た館』先進のマテハン技術を体験・体感
大規模リニューアルしたダイフク『日に新た館』
先進のマテハン技術を体験・体感
「将来の拡張に備える」
「人のいない物流センター」
大阪機械器具卸商協同組合(大機器協/中山哲也理事長=トラスコ中山社長)は10月25日、マテリアルハンドリング(マテハン)システムの世界トップメーカー、ダイフク(本社=大阪市西淀川区)の『日に新た館』(ひにあらたかん/滋賀県蒲生郡日野町)にて企業見学会を実施した。
大機器協の同活動は、昨年は当時の新型コロナ感染拡大状況をふまえ動画配信視聴で工場見学(MSTコーポレーション)を実施したが、今年は総勢91名がバス5台に分乗し現地に赴きリアル開催した。施設見学後はJR近江八幡駅前のホテルニューオウミに移動しての懇親会を開き、会員間の親睦を深めた。
『日に新た館』はダイフク滋賀事業所内に常設する世界最大級のマテハン・ロジスティクスの体験型総合展示場で、1994年の開設以降、これまで世界約90の国と地域から延べ約50万人以上が来館している。
コロナ禍により2020年3月以降は一般見学を中止していたが、この期間を利用し、昨今、AIやロボットなど急速な技術革新が進むなか、自社で開発・生産した最新のマテハンシステム・機器29機種を含む計57機種を展示する大規模リニューアルを実施、約2年をかけ、今年6月1日にグランドオープンした。
なお、滋賀事業所の敷地面積は約120万㎡・36万坪で、東京ドーム約26個分に相当する。敷地内には、日に新た館を含めて14棟の開発・生産工場などがあり、従業員は社員・パートナー含め約3千名で、一般製造業、流通業から自動車、半導体など幅広い業界の要望に応える生産体制を整えている。
見学に先立ったあいさつ、説明の中では、ダイフクの鳥谷則仁執行役員(イントラロジスティクス事業部営業本部長)の案内により、下代博社長がビデオメッセージで登場。滋賀事業所操業当時の経営陣の思いを、「日本には将来、マテハン技術を必要とする究極の人手不足の時代がやってくる。この広大な自然に恵まれた環境で、人間性豊かな生産性の高い夢のある工場をつくろうというインダストリアルパーク構想のもと、1975年に操業開始した」とふれた。
続いてのあいさつで、大機器協の中山理事長は、「いま、物流を軽んじる者は、ほぼ、いなくなったと思う。かつてのイメージとは違い、物流の果たす役割は非常に大きくなってきている」とし、「見学する上で少し観点を変えてほしい。さまざまな物流機器の登場による省力化やスピードアップのみならず、最新鋭物流機器の組み合せにより、世にない新サービスを生み出す閃きにつながれば」として、自社(トラスコ中山)で好評を博しているユーザー直送を例に挙げ、「今年は年間約400万個」の直送実績にも言及した。
参加者は5班にグループ分けし、1階には「パレット系自動化システム」「ピース系・ケース系自動化システム」「自動車生産ライン向けシステム」のコーナーがあり、今年9月に開催された国際物流総合展2022(東京ビッグサイト)で披露した超多品種を取り扱う物流センターで出荷頻度の低いアイテムに対応する製品として開発されたロボットビークルを見学。
2階では「ピッキング・仕分けシステム」「半導体・液晶生産ライン向けシステム」「空港向けシステム」のコーナーがあり、欧州メーカーからレールやキャリアなどのパーツのみ提供を受け、新規に独自開発したハンガー式ピース仕分けシステム『パウチソータ』(国際物流総合展2022に出展)やスペースが限られた物流センターにも導入が可能な高速ピース仕分けロボット『STR-S』の実機展示などのデモンストレーションを見て回り、最新の映像・音響システムを備えたシアターも体感した。
見学終了後、あいさつに立った大機器協の古里龍平副理事長(企業見学委員会委員=ジーネット社長)は、「日本では、人口の高齢化、中国からのものづくりの回帰、ネット通販の進化といったなかで、省力化・省人化は我々の業界においても大きなテーマであり、この見学会の実現は当組合にとっても非常に意味があった」と意義を強調。ダイフク製品を「知恵のかたまり」と表現するなど謝意を示した。
最後に質疑応答で鳥谷執行役員は、「ここ10年で変わったのはスピードとサイズ」とした上で、「トラック積込み、荷降ろしの自動化」や「(ケース単位から)ピース単位でのピッキングの自動化」等に言及しながら、物流の将来についての考えを、総じて、「拡張に備える」「人のいない配送センター」とまとめた。
2022年12月29日