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ユーザー通信244号 1面:日本AM協会×JAXAコラボセミナー開催/少量生産、軽量化・・・ AM技術の適用が非常に有効な宇宙分野

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JAXAがRFI(情報提供要請)募集中

今年3月に設立された「一般社団法人日本AM協会」(永安悟会長、事務局・立花エレテック/AM=Additive Manufacturing=3D積層造形)は7月19日、最初のキックオフイベントとして、宇宙におけるAM技術活用の可能性をテーマとしたJAXA(宇宙航空研究開発機構)とのコラボセミナーをオンライン開催した。

宇宙分野といえば、少量生産、軽量化、高付加価値といった点においてAMの適用分野として非常に有効であると考えられる。欧米ではチタン加工を中心にロケット製造等での活用が急速に広まっている。さらに再利用可能ロケットなど新たな宇宙機器産業が次々と立ち上がり、宇宙ビジネス全体の市場規模は2040年までに100兆円規模になるとの予測もある。海外の事例では、周知のとおり、イーロン・マスク氏率いるスペースXは早くからAMを活用しロケットのエンジン部品等を製造している。さらには、近年ではスペースXを追撃するスタートアップも出現しており、Relativity Space社はロケットの大部分をAMで製造し、低コストで大容量のペイロードを実現するロケットを開発している。このように海外では活発な動きがある。

一方、現在の日本の宇宙産業の市場規模は約1・2兆円で、2030年代早期に倍増という政府目標を掲げており、これに向けて様々な宇宙機器開発や実証事業等が行われている。現在、JAXAが「革新的将来宇宙輸送プログラム」においてRFI(情報提供要請)を募集しており、その中にはAMに関連する技術テーマがある。ただし、AMの活用においては、既存の工法、部品を全てAMにそのまま置き換えることは現実的ではない。従来工法とAMそれぞれのメリットを活かすことが重要と考えられる。その意味では、新規参入を目指す企業にとっては、全く新しいアプローチによる製法を取り入れるとともに、自社が強みを有する素材や工法などの従来分野で培った技術力を組み合わせ、それらを付加価値として生み出すことが期待できる。また、すでに宇宙分野に参入している企業にとっては、AMを取入れノウハウを蓄積することによって、宇宙以外での分野のものづくりも高度化させることが可能と考えられる。

このように、AM関連での宇宙産業への新規参入、あるいは自社の競争力強化のきっかけになることが期待されるセミナー、ミーティングの機会となった。

▲Q&Aミーティングワンシーン

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