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ユーザー通信 242号 6面:岡本工作機械の現時点/2年ぶり「PSG会支部連絡会」開催

ユーザー通信 WEB版

最新技術動向を紹介、「EV化の中で研削盤の役割」を強調

受注割合で半導体製造装置が工作機械超え、JIMTOF2022から受注開始の新機種を先行紹介

「研削で価値を創造するソリューション企業へ」―研削ノウハウを世界展開(石井社長)

岡本工作機械製作所(本社=群馬県安中市)は4月18~20日にかけ、中部(名古屋)・西部(大阪)・東部(東京)の順に、代理店会「2021年度 PSG会支部連絡会」を開催した。

本来は2月上旬の予定だったが、まん延防止等重点措置期間に重なり延期、西部支部連絡会は4月19日に吹田市の新大阪江坂東急REIホテルを会場に行われた。

同社は2016年よりより、「Mission GX」「SINKA2022」2つの中期経営計画をこの3月に終了、売上高380億円(営業利益率12%)を目標としていたが、結果は米中貿易摩擦、コロナ禍という逆風の中、連結売上高は07年度を超え過去最高を達成できる見込みとなった(※その後5月12日に決算発表=375億4700万円)。

連結会では、参加代理店各社への最新技術動向の紹介・勉強会=「超精密平面研削盤の活用について」、「OKAMOTOの最先端成形研削技術」、「研削加工におけるEVターゲット情報」をメインに、「脆性材加工への新たな試み」としてJIMTOF2022から受注開始となる製品が先行紹介されるなど、総じて「EV化の中で研削加工の役割」が強調された。

そして、毎回そのプレゼンス内容の高さに否が応でも期待が高まる伊藤暁常務(技術開発本部長)による特別講演では今回、「日本の伝統技術復活-日本が向かうこれから-」「半導体王国復活」「半導体産業で日本企業が圧倒する市場」「何故TSVウェハーが次世代に必要なのか」「Beyond5G その先の6Gへ」等の話題について説かれた。

そんな中、石井常路社長は、「当社は1935年の創業以来83年が経過した。この4月より2025年3月を最終年度とした新中期経営計画に入っている」とし、好調な市場が続く中で「研削で価値を創造するソリューション企業へ」をビジョンとして、「工作機械事業では研削ノウハウの世界展開、EV関連向け需要が好調な中国戦略深耕、半導体製造装置事業では半導体デバイスは年率8%の伸びが期待されており、その需要に応えていくために社内における半導体製造装置ラインの再構築や資材倉庫の自動化や時期新機種の開発を率先していく」等指針を示しあいさつした。

渡邊哲行常務(営業本部長)は、コロナ禍の2年間で仕事の取り組み方が様々な意味で変わってきたことにふれ、「デジタル技術やWebツールを当初は使い辛いと思っていたが、使いこなせてきたと思う。展示会も昨年後半からリアル開催も再開され、今後はデジタルとリアルによるハイブリッドの使い分けで仕事を進めていくのだと思う」旨あいさつとした。

2年ぶりとなった今回のPSG会支部連絡会で、江連武彦国内営業部長により語られた同社の主な概況(21年度)は、概ね次のとおり。

×  ×  ×

工作機械・半導体製造装置の受注高・受注残推移について、連結受注割合では工作機械45%、半導体製造装置55%。半導体製造装置が大口受注で一気に跳ね上がり、ついに工作機械を超える状況となったが、工作機械も堅調に受注が獲得できており、割合で見ると少なく感じるが、実際の受注数字では前年を大きく超えている。

半導体は素材であるシリコンインゴットからチップになるまで約400工程あり、その中のファイナルポリッシュ工程において当社製品の評価が高く、全世界の半導体メーカーの7~8割のユーザーにて当社製ファイナルポリッシャーが活用されている。半導体チップが増産されれば必然的にファイナルポリッシャーの需要が高まり、今後も堅調に受注獲得ができると考える。

国内外連結売上割合では、工作機械のみ(半導体製造装置含まず)で国内44%・海外56%。同半導体製造装置を含めれば国内40%・海外60%と、いずれにせよ海外上位となっている。まだまだ国内の回復はこれからあると考えており、工作機械の受注はこれからだ。

国内営業所における受注台数と受注額成長率(20年度比較伸び率)では、台数で1位が北関東(149%)、金額では1位が大阪(230%)の順。国内における各エリアの前年比はいずれも120%超えとなっており、主に自動化や高能率や機上計測の機能を有した研削盤が増加傾向にある。

研削盤の業種別販売額割合は、一般機械・機械部品31%、金型17%、治工具13%、セラミックス6%と続く。以前は金型が大きなウエイトを占めていたので、部品加工がかなり多忙な状況にあることがわかる。その理由のひとつが、やはり半導体製造装置向け部品加工の伸長である。

業種別受注台数の伸び率では、セラミックスが235%。

地域別機種別販売セグメントでは、中型までの平面研削盤が東部と西部ではメインとなっているが、中部エリアでは円筒と内面研削盤が他のエリアよりも受注が多く、自動車関係を含め丸物加工が多い地域の特性がよく表れている。

シリーズ別の国内受注額で突出しているのがPRG(ロータリー平面研削盤)で354%、セラミックス向けの堅調さが表れている。UGM(複合研削盤)HPG(成形研削盤)では複合化による高精度加工のニーズや電子金型関連の好調さもうかがえる。

22年度は前年同様に景気回復傾向と予想。業種としては全体的に回復基調であるが、特に半導体関連製造装置・EV関連が継続して受注を牽引すると思われ、門形・超精密研削盤の受注獲得を目指す。

さらに、SDGs関連を見据えた環境対応・省人化等の付加価値製品の提案を行っていく。前年同様、各種補助金・税制補助関係がユーザー設備投資を後押しする。

当社研削盤の強みであるセラミックス、金型業界の回復傾向によりさらなるPRを行う。また、JIMTOF2022に向けた新製品開発を行っていく――。

▲大阪・江坂での西部支部連絡会のようす(石井社長あいさつ)

 

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