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ユーザー通信233号3面 10/1 統合新会社 「フルサト・マルカHD」始動

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10/1 統合新会社

「フルサト・マルカHD」始動

売上高1600~1700億円のボリュームからスタート、2025年目途に営業利益20億円ベース見込む

6月25日に行われたジーネットおよびフルサトグループの決算関連報告(※本紙2面参照)の場では、5月7日に発表されたフルサト工業とマルカ(本社=大阪市中央区南新町2丁目)との共同持株会社設立による経営統合についても説明がなされ、古里龍平社長は概ね、次の内容を語った。

今年10月1日をもって、株式移転の資本により、共同持株会社「フルサト・マルカホールディングス株式会社」を設立し経営統合する。

海外のオペレーションではマルカが圧倒的に強いことから、英語表記では「MARUKA FURUSATO CORPORATION」とし、現マルカ社長の飯田邦彦氏が会長に就き、社長は古里社長が兼務する。

株式移転比率として新会社1株につき、フルサト工業1株:マルカ1・29株の割り当てとなる。

本社所在地はフルサト工業本社、会計基準は日本基準。

マルカは工作機械を中心とした産業機械、建設機械を直接、大手中心にユーザーに販売する機械系商社であり、中でも特長的なのは、海外営業基盤ネットワーク(北米・アジアに23拠点)に強さを持つのが特長であり、売上高構成にして3~4割の比率を持つ。

「両本社間300m」の縁が育んだ新展開

これまでも両社は、DMG森精機の代理店同士としてなど、様々な場面で接点はあった。また蛇足ながら、両本社間は信号2ヶ所を経て約300mしか離れていない「ご近所さん」としても縁があった。

そんな両社では兼ねてより経営幹部同士による会議がもたれることもあり、同じ業界で規模的にも似ていることから、「何か協業はできないか」と模索する中、「非常に補完的な関係になれるのではないか」と感じるようになった。

昨年の秋口頃からは、実質、経営統合への機運が高まり、対等な精神に基づいた経営統合を古里社長側から提案し、昨年12月には両社FA(ファイナンシャルアドバイザー)を指名し、法的にも統合の詳細を詰めていった。

その背景には、将来にわたり、取り巻く経営環境の激変下での生き残りを常々考える中、マルカもまた然りだった。

外部環境では、気候変動・環境変化、社会問題・地域格差、政情不安・経済影響、EV化・クリーンエネルギー、自動化・生産効率、消費行動変化・循環経済といった果たさなければいけない責務が多様化し、難易度が上ってきている中で、フルサトグループの売上高で約1千億、マルカで600億円規模の会社それぞれが、別個に必要な対応をとりながら成長を続けることができるのかが、大きな課題であった。

その過程で、今後成長するためには、様々な新たな課題への取り組みが不可欠であり、例えば、自動化ソリューションや環境対応ビジネスなどを想定し、これまで結構長い期間、パートナーシップの検討を行ってきた中で、多かったのは買収案件だが、マルカとは相互補完が、ある意味完璧に行えるベストマッチなのではないかと感じた。

相互にないものを相手が持っている、マルカの強みは60年におよぶ海外営業基盤

マルカグループの強みは、60年におよぶ海外営業基盤、自動車産業との強固なつながり、独自のメーカー機能、MM会、F-MM会(食品関係)組織の活用、海外進出のサポートなど物売りではないサービスの機能も保持している。

一方、フルサトグループは、建築資材における強固な事業基盤、岐阜商事を通じたトヨタ系ティア1各社との取引による強い絆、フルサト工業はメーカー機能を持ち、ジーネットではエンジニアリング機能を保持し、機械・機器における卸を中心としたサプライチェーンがすでに構築されている、といった強みがある。

逆に、フルサトグループのウィークポイントをわかりやすく挙げれば、海外営業基盤となる。

これはかつて、ジーネットとフルサト工業がグループ化した2000年に、債権を優先するがためにジーネットの海外拠点を全て売却した。債権のドメインをできるだけ小さくするためだったとはいえ、「海外は一度捨てた」といえる。

片やマルカグループは海外営業基盤が既成ではあるが、弱点としては産業機械、建設機械を中心とした非常に業績のボラティリティ(変動率)が高い会社であり、設備投資連動で売上が大きくアップダウンする。

反面、フルサト工業は建築資材という非常に細かい商売であり、ジーネット、岐阜商事についても工具などは、どちらかといえば設備投資連動よりは鉱工業指数連動だといえる。

そんな両社が統合すれば、安定化した売り上げの補完がなされる。片側の弱点を片側が補完する、どちらも注力しているところはさらに強くなる、という構図ができるのではないかと考えた。

技術商社としてのプレゼンスを確立

共通の経営観は「ユニーク」「相互補完が完璧に行えるベストマッチ」(古里社長)

両社の経営に対する考え方として、ともに「ユニーク」をキーワードとしている。マルカは「Unique Solutions」をモットーとし、フルサトグループは「Uniqueな発想による価値創造経営」をポリシーとする。これが統合することにより、技術商社としてのプレゼンスが確立すると考える。

ビジネスモデルとしては、ユーザーに最適価値を提供する「プラットフォーム戦略」を推進する。同戦略は元来よりフルサトグループが進めてきたが、そのセグメントの青写真を持ちながら、社内育成に努めていく上で、足りない部分については、外部からファンクション(機能)を買収していくという戦略をとってきた。5年前のセキュリティデザインの買収は、その最たる例である。

このように、まずプラットフォームをつくり青写真を共有して、そのプラットフォームに適した会社が合流することについてはウエルカムであるという姿勢を今後も続けていく予定。

EV関連事業、自動化・省人化、環境・省エネ、食品機械、グローバルマーケットといった5つの分野に注力し、今後、経営資源を優先的に配分しながら展開していく。

また、両社は工作機械/産業機械で一定の国内規模を有しており、重複しないブランドではクロスセルでラインナップの拡大、コスト低減を図り、重複するブランドではメーカー内取扱量拡大でメリットの発生を見込む。

ユーザーに最適価値を提供する「プラットフォーム戦略」をさらに推進

ロボットSIer事業での早期シナジー期待

さらに、両社が有するロボットSIer機能の統合で対応力強化、エリア拡大を図るなど、何よりも早くシナジー効果が表れやすいのがロボットSIer事業だと期待される。
その他、国内外拠点網の相互活用(フルサトグループの製造・物流国内拠点128ヶ所、マルカの海外23拠点網)、ヒューマンリソースの最適配置、成長分野への集中投資を通じ、キャッシュフロー創出力を向上する。

将来的には最も効率的な事業再編を想定

なお、統合ストラクチャーは共同株式移転による持株会社化で、現在の両社の株主は10月1日を以てフルサト・マルカHDの株主となる。9月末でフルサト工業、マルカ両社ともに上場廃止となり、10月1日付でフルサト・マルカHDが上場し、その傘下がフルサト工業とマルカとなる。フルサト工業の子会社であるジーネット、岐阜商事、セキュリティデザインはフルサト・マルカHDからすると孫会社の気付になるが、現状でのオペレーションは企業ごとに行うため、親・子・孫の位置付けは実質的には関係はないものの、将来的には内容によってシャッフルし、最も効率的な事業再編を行う想定する。

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古里社長によれば、「経営統合により売上高で1600~1700億円のボリュームからスタート。ものづくりを全力でサポートする技術商社として、2025年度を目途に、連結営業利益ベースで20億円程度のシナジー効果が発現する見込み」だと、質疑応答に答えるかたちで付け加えた。

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