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ユーザー通信230号 7面 ワイヤレス給電の世界と工作機械

ユーザー通信 WEB版

ワイヤレス給電の世界と工作機械

「YUASA Growing フェア 関西」セミナー聴講

加工室内の反射により高効率な送電実現

配線難、腐食・断線、加工状況把握が
ペインの工作機械内部で進む実証実験

3月25~26日、インテックス大阪で開いた「YUASA Growing フェア 関西」初日のセミナーにランナップの『ワイヤレス給電で配線のない世界の提案』を聴講した。

そもそもワイヤレス給電とはどういったものか?

「ケーブルを使わず非接触により電力を伝送する技術」の総称となるが、たまたま記者も昨年末に購入した「ⅰphoneの置き型充電器=Qi規格」といえばイメージしやすいだろう。かといって「ワイヤレス給電といえばQi規格」と考えるのは「よくある勘違い」らしい。

ワイヤレス給電はQi規格=磁界結合方式を含めて、伝送の方式は6種類に大別され、方式ごとにメリット、デメリットが存在するようだ。つまり、ワイヤレス給電という「一括り」にはできず、「アプリケーション毎に適切な方式を選択することが必要」とのこと。

講演(オンライン)したエイターリンク社はこれまで、心臓のペースメーカーを世界最小レベルまで小型化し、実際に動物の心臓内に入れ、体外から体内深部への給電を空間で行い10m以上の給電を可能とする長距離ワイヤレス給電技術を強みとしている。

このような長年のバイオメディカル領域技術の商用への応用を行っており、今後DX(デジタルトランスフォーメーション)により、あらゆるアナログデータをデジタル化する必要があるが、爆発的に増えるセンサーはワイヤレス給電技術により完全コードレス化する社会的な課題がある。

そんな中、FA領域においては、エンドユーザーから「自社工場をスマート化させたい」「面倒な配線をなくしたい」、センサーメーカーからは「自社センサーをワイヤレス給電対応センサーのスタンダード品にしたい」、そして工作機械メーカーからも、「差別化を図りたい、配線問題をなくしたい」という課題があがる。

以下、この「工作機械の内部でのワイヤレス給電」を語ったワンシーンに注視したい。

横形マシニングセンタをイメージすれば分かりやすいが、工作機械のパレット上に積載したワークを加工する場合、1℃温度が上昇してしまうと、ワークは10μmほど伸びてしまうといわれ、精密部品加工が要求される航空機部品や一部の自動車部品では、10μmの差異が致命的になってしまう場合もある。

そのため工作機械メーカー各社はサーボマネジメントを行っているが、ワークのできる限り近くで温度を管理したいとの要求がある。しかしワークの出入りがあり、もちろん配線することは難しく、さらにはバッテリーを交換することもなかなか難しい。

こういったことから、これはワイヤレス給電でしか出来ないということで、すでに実証実験に入っているメーカーもある。

加工室内部を想定したシミュレーション結果においては、工作機械内部(加工室内)の反射により電波を閉じ込める性質があるため、電波効率がよく、約3%の高能率な送電効率を実現、確保することができる。

これは単なるセンサーだけでなく、カメラなどの立地コンテンツを扱うデバイスについても、ワイヤレス給電で賄うことができるということを意味する。

そこで、次のようなセンサーが対象となってくる。工作機械へのセンサー導入として考えられているのが、温度センサー、振動センサー、圧力センサー、さらには近接センサーについては既に利用中のようだ。

それぞれ詳細は、まず「温度センサー」のペイン(=減らしたい要素)は配線難で、目的はワーク・テーブル温度センシング(サーモマネジメント)。

次に「振動センサー」のペインも配線難(含む回転部分)であり、モータ、切削刃、ガイド、ケーブルベアのセンシングデータ(予防予測)が目的となる。

続いて「圧力センサー」のペインは加工状況把握で、目的はワークの加工状況をリアルタイムに把握すること。

最後に「近接センサー」のペインはクーラントなどの悪環境下での腐食・断線・稼働部の断線であり、ワークの正位置検出を目的とする。

このようなセンサーは、ワイヤレス機能で稼働させることが十分に考えられることが確認済みだという。

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