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ユーザー通信226号 第3面:匠の技とスマートファクトリーの融合 オーエスジー

ユーザー通信 WEB版

匠の技とスマートファクトリーの融合  オーエスジー
NEO新城工場の全貌
「超多品種少量生産にこだわる」

オーエスジー(本社=愛知県豊川市本野ケ原、石川則男社長)の新城工場をリニューアルした「NEO(ネオ)新城工場」(愛知県新城市有海字丸山)は今年10月2日をもって、外構工事も含めた全てのリニューアル工事を終了した。だが現在のところ、新型コロナウイルス感染がある程度収束し、来るべき時期までは、OSG全工場の見学は原則行われていないため、紙上再録にて、NEO新城工場についてのほぼ全貌をレポートしておきたい。
NEO新城工場で生産するのは、超硬ドリル、超硬タップ、ハイスドリル、ハイスエンドミルで、月当たり5400種類、7700ロットの工具を生産する。
工場に勤務する人員は約600名で、能力的には月当たり6千種類、8千ロット、70万本以上の生産能力を持っている。超硬ドリルと超硬タップは1ロット当たり20本以下が大多数で、200本もあれば、かなり多い方になる。
この規模の工具工場で、これだけの多品種少量生産に取り組んでいるのは、世界中でもおそらくNEO新城工場だけであろうと推測される。

人が中心、ツールとしてのデジタル化推進

具体的な取り組みとしては、デジタル化の徹底で「工程の見える化」を図り、設備稼働率を上げるために、砥石、治工具、プログラムを一括管理する「外段取り」などを実施している。
しかし、月あたり7千ロットもの生産工場ゆえに、本質的に大切なことは「人の力を生かす」ことと捉えており、人が中心であり、ツールとしてデジタル化を進めている。今年10月には生産管理システムの新バージョンを導入し、さらに、次世代型の複合研削盤と自動検査装置も開発している。
この超多品種少量生産は、日本においても成立する生産システムと考えられており、多品種小ロット生産の場合、標準品と特殊品の混合生産であっても、世界最強の競争力を持つというのがNEO新城工場の目標であり、ユーザーに選んでもらえるよう競争力、QCDを実現することが重要と考えている。
NEO新城工場内の新棟には、超硬タップと超硬ドリルの製造を集めた。これらは全く生い立ちの違うもので、超硬タップは特殊品が多く、ロットも小さいという傾向がある一方、超硬ドリルは近年ニーズが高まり、新城工場と大池工場(豊川市一宮町)の2ヶ所で生産していた。
このように生い立ちが違うため、それぞれ異なる加工機で生産していたが、冷静に考え、「なぜタップとドリルの前工程でこんなに加工機が違うのだろう」という疑問に突き当ったという。
そこで、思い切って全てを一つの工場に集めてつくり方をできるだけ統一するということを進めた。作業者にとっても多能工化を進めることができ、需要変動にも対応した人員配置が可能となり、「なるべく同じようなつくり方に寄せる」という考え方をとった。
製造現場での取り組みでは、生産コストで大きな割合を占めるのは設備費で、止まっている機械をいかに少なくするか、切りくずをいかに多く出せるようにするかが重要となる。そのためにIoT化、見える化を徹底して進めた。新システムでは、生産管理、製造技術、製造のメンバーが生産管理画面の前に集まって、どうやれば設備稼働率を上げることができるか、知恵を出し合っている。

「ゼロワンファクトリー」とは

こういったNEO新城工場の構築を進めるにあたっては、「ゼロワンファクトリー」という考え方を根底に置いて進められた。今までの手法とは一旦切り離し、まずゼロから考えてみよう、そして重要なのはゼロから1を生み出せるのはITではなく人であるということ。長年培ってきた「巧の技」や「研削加工技術」と「最新のデジタル技術」とを融合し、生産性とアウトプットを最大化するための次世代の基幹工場として、NEO新城工場は建設された。

3つの最新デジタル化

加工機ごとの稼働率、生産スケジュール、生産状況、流動数などの情報を共有し、収集したデータを分析する「生産情報のデジタル化」は、徹底的に生産の無駄を省き、状況に応じた最適な組み入れを行うことで標準品、特殊品ともにリードタイムの短縮を目指している。
加工された製品は「品質管理のデジタル化」により、引き当て材料、加工履歴ともに測定値を品質情報としてサーバーで一元管理し、トレーサビリティーの確保を図っている。
各工程での高品質、高能率生産を維持するために設備の「保全情報のデジタル化」を行い、予知保全体制を整備した。

ダイバーシティ実現を目指した施設環境

またNEO新城工場では、オフィス(生産状況を集約してモニターで確認できるコーナーを設け生産の見える化を一元管理等)、社員食堂(ランチでは27種類のメニューから選べ、ライブブックメニューが人気等)、会議室(世界各地のOSG生産拠点の国名を会議室に使用等)といった社員の働く施設の環境にさまざまなアイデアを取り入れて、働きやすい環境づくりを進めている。

鎖のモニュメント『地球を吊る』

さらに、NEO新城の正門を入って、新棟の前、ちょうど工場全体の中心となる位置には、同社に携わる彫刻家としてはおなじみの、三澤憲司氏による鎖のモニュメント『地球を吊る』が設置された。
この作品は高さ8・5m、重さ約4トンのステンレス製の鎖で、宇宙に向かって地球から伸びた鎖が、地球を吊っているイメージで、大地が割れ、マグマがあふれ出そうとしている様子を表現した。
これは、今までの発想に囚われることなく、時には全く違う方向から物事を観る「逆転の発想」を意味し、オーエスジーの新なモノづくりにこの「逆転の発想」を取り入れ、これから、もっとあらゆる方向から自由に物事をみて、モノづくりに活かしていこうとの考え、改めて自由な発想の重要性が示されている。

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