ユーザー通信218号 8面:ヤマシタワークスに見るBCPの遂行
ヤマシタワークスに見るBCPの遂行
新型コロナウイルス対策につながった「伊丹第3工場」の存在
給食の牛乳や生花の購入支援で社会貢献も
ヤマシタワークス(兵庫県尼崎市、山下健治社長)における「新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)への対応」を取引先に通知したのは、2月7日。
ダイヤモンド・プリンセス号の横浜港着岸が2月3日であり、テレビ各局のワイドショーが新型コロナについてこぞって取り上げだした頃だけに、2月7日は、相当迅速な対応だったといえる。
同社がBCP(事業継続計画)および感染を防ぐため、各取引先に向け発信した内容は、次のとおり。
①アルコール消毒を設置し、来客や従業員に手指の消毒を励行
②社内においてペーパータオルを設置、健康面で不安がある従業員にマスク着用を励行
③集団感染や感染の拡大防止のため、社内行事の一部取りやめ、延期
④時差出勤の導入、マイカー通勤の容認
⑤昼食時差休憩の導入
⑥微熱・倦怠感等を感じる従業員に欠勤(有給休暇を含む)を周知。
そして感染者がある場合、または身内などで感染者がある場合は、医師や行政機関の指導に基づき適切に対処するとしている。
ヤマシタワークスは、金型および部品の製造・加工、冷間鍛造パンチの製造販売をベースに、金型など鏡面仕上げ装置『AERO LAP』(エアロラップ)の開発・製造を行い、近年では医薬品用金型の製造販売も手掛けている。尼崎市そして隣接する伊丹市に計3工場を展開するが、今回の新型コロナへの対応では、その3工場の役割についても明記している。
▽本社工場(尼崎)=パンチ事業(自動車関連)・エアロラップ事業
▽第2工場(尼崎)=杵臼事業(製薬関連)
▽第3工場(伊丹)=杵臼事業(製薬関連)・パンチ事業(自動車関連)
浜田賢治統括部長はいう。
「当社が所在するのは、兵庫県尼崎市西『長洲』町であり、そしてJR尼崎の駅前は『潮江』地区という、いかにも海抜が低く、元は海だったことを地名が物語っている。さらに近年の台風は、沖縄近海から北上するよりも、四国の真南から上がってくるパターンが多いこともあり、大雨や洪水被害など、関西にとってはやっかいだ」。
そんなこともあり、加えて元々は山下社長が南海トラフ地震を想定したうえで、同社は昨年7月にBCPの一環も兼ね、第3工場として伊丹工場(伊丹市北園)を開設した。
工作機械は本社工場からの移設含め4台増設し、尼崎の第2工場同様に、伊丹の第3工場でも杵臼事業(製薬関連)を行える体制をつくっていた。顧客からの「もし非常時となった場合、どのような生産体制を考えているか」といった問いに対し、今回の新型コロナ対応が、図らずも、その回答にもつながったことになる。
ヤマシタワークスでは、新型コロナの感染拡大を受けて、国が労働者や企業のための支援策を打ち出していることを受け、近隣の園児たちにマスクを提供、また給食の牛乳や生花の購入支援も行った。
瓶入りの牛乳とコーヒー牛乳を約200本、福島県産の「サンふじりんご」を何十箱単位で購入。 「コーヒー牛乳は久々に飲んだが、むちゃくちゃおいしかった! りんごも絶妙な蜜加減で、これまたおいしかった!」と前出の浜田部長。
ただ寄付するのではなく、こういった社会貢献もある。こういったところにも、山下社長のアクションの速さが実感できる。
2020年5月2日