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ユーザー通信189号 Vol.02 センス・オブ・MECT「逆説の見本市」を考える

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国内最大級の工作機械見本市『メカトロテックジャパン (MECT)2017』が、10月18日(水)~21日(土)の4日間、名古屋市港区のポートメッセなごやで開催される

主催のニュースダイジェスト社(名古屋市千種区内山、樋口八郎社長)、共催の愛知県機械工具商業協同組合によれば、今回の展示規模はリーマン・ショック前の2007年展に次ぐ1933小間で、前回展の1915小間を上回り、今年国内で開催される工作機械見本市としては最大となる。
出展者数は457社・団体。うち全出展者の16・8%にあたる77社(前回69社)が初出展し、会場内に展示される工作機械、各種装置は376台。また、1190点の新製品(1年以内に発表されたもの)が展示される予定(※いずれも8月31日までの集計)。海外からの参加は23カ国・地域を数える。

毎回、世界最先端の技術での実演加工に挑戦する主催者コンセプトゾーン(企画展示)では、新市場として期待される「宇宙」にスポットを当て、宇宙ベンチャーの取り組みを紹介するとともに、最新の人工衛星に向けた部品加工など、宇宙市場で必要とされる加工技術を会場内で披露する。
また、主催者企画のセミナーでは、トヨタ自動車、マツダ、ボーイングらが、それぞれの分野から、ものづくりの今後について講演する。
なお、1987年にスタートしたMECTは奇数年に開催。今年で通算16回目の開催、そして「30周年」を迎えた。

 

さて、このように今年もMECT(メカトロテックジャパン)の季節がやってきた。が、いきなり他業界の話に転じて恐縮だが、出版業界では今年、日本最大の「本」の見本市、「東京国際ブックフェア(TIBF)」の開催が「休止」となった。

TIBFは1994年から開催され、昨年で23回を数えていた。スタートが90年代なので、感じ方にもよるが、それほど「歴史」を覚えるものではないのかもしれない。だが、存在としては、当業界でいえば「JIMTOF」に該当するものだ。

それだけに、この報は非常にショックだった。国内における出版不況は言わずもがな、そのため年々、急速に活気を失っていたTIBFだけに、「いよいよ」「ついに」といった声が多い。今回はあくまで「休止」「見送り」であり、主催社・共催団体は再開を目指しているという。
だが、結果的には事実上、先進国である日本に「本の見本市」が存在しなくなったという情けない事態を嘆く向きが多い。
その「ショック」に同感するわけだが、ブックフェア自体の存在意義を左右したのが、電子出版の登場、普及にもあったようだ。「本」そのものより、ライセンス、コンテンツ・マーケティングなどがテーマ性を強め、「読者謝恩」が薄らいできていた。
前置きが長くなったが、「テーマ性」における『逆説の見本市』ということだ。

MECTはフェア自体のテーマは謳っていないものの、それにあたるコンセプトゾーンでは今回、「宇宙」を挙げている。また、日替わりのセミナー「自動車」「航空機」とも合わせた、この3つがテーマといえる。

昨年のJIMTOFをはじめ、昨今の展示会でのテーマといえば、必ずIoT、AI、ロボット、インダストリー4・0、スマートファクトリーといったところが乱舞するものだが、MECTでも、もちろん、出展各社のブースでは、そういった展開は盛んだろう。

だが、MECTのテーマ自体としては、あくまで自動車・航空機・宇宙であって、それらにまつわる「加工」である(=現場謝恩、ユーザー謝恩)。フェアそのものとしてのテーマ性に、IoTやAIなど(=電子書籍)にふれなかったのは、「あえて」ではないのかもしれないが、こういったところに、MECTという見本市の「粋」、「機微」を感じる―。

 

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