新春インタビュー タンガロイ 木下聡社長

 

「プレーイングマネージャーであり続けたい」
「モノ」売りから「コト」売りへ
「航空宇宙産業」「ツーリング」の専門チームが躍動し実績伸長

タンガロイ(本社=福島県いわき市)の木下聡社長に今年も新春インタビューに臨んでもらった。締め括りには「プレーイングマネージャーであり続けたい。社長という肩書きではあるが、自身で市場を回って世間の要求を聞くこともあるし、開発にも携わりたい。若い人たちとも話したい。そういう面でプレイヤーでいたい」と2020年の「個人的な志」にもふれた木下社長は、2019年度の概観と成果、新製品開発、「効率的な加工」、営業スタイル、設備投資について、次のように述べた ー。

― 2019年(12月期決算)の概観

木下 中国とインドが精彩を欠いたものの、逆に欧米が少し伸びたことによりマイナスを埋め切れ、全体的には若干のマイナスで推移した。国内についても3~4%程度の減で、全体では5%程度の減で終えたと見ており、一昨年までの繁忙さから「落ち着いてきている」と表現したい。
中国は予想以上に良くなかったが、他は意外に健闘し留まれたのかなと思う。切削工具は日々の消耗品なので、工作機械の投資に比べれば、まだまだ物の流れは続いている。自動車の減産など業種によってのマイナス要素はあるが、航空宇宙産業は対前年比で30%増と大きく伸長した。

 

― 航空宇宙産業向けが伸長した背景

木下 タンガロイの開発では産業別の開発も行っている。これまで航空宇宙産業でのマーケットシェアはさほど強くなかったが、2年前に「航空宇宙産業グループ」を新設し、開発とマーケティングも含めた取り組みが実績につながっているのだと思う。
また併せて、ツーリング専門のチームも新設した。5軸マシニングセンタでの加工がますます増える中で、効率的なツーリングを組むことは容易ではない。特に航空宇宙産業向けの部品は削り代(しろ)も大きく難しい部品も多い。そういう中で様々なシミュレーション、解析をしながらツーリングを組んでいくチームであり、お客様からの要求は一昨年の100件から昨年は200件超えと倍増している。

 

 

― 専門チームにもたらされる要求

木下 工具とはリリースするだけでは効率的な使い方がなかなか叶わないので、例えば、お客様のワークの3Dモデルを見ながら対応を考えるのも工具メーカーの仕事だと思う。このようなロジカルな解析を元にツーリングを組んでいく。元々は航空宇宙産業向けに始めたが、自動車産業や自動盤向けなど、意外と様々な要求があることがわかり、チームをボリュームアップした。
タンガロイの需要先はこれまで自動車産業の比率が非常に大きかったので、航空宇宙産業やエネルギー産業、メディカルなど広い産業分野に構成を分散するよう、産業別マーケティングを実施している。
そういう面では、「モノ」を売るのと同時に、使い方やツーリングといった「コト」のサービスもする。「モノ」と「コト」のセットで取り組んでいく時代になってきたということで、そういったチームをつくっている。

新製品の売上高比率の最終目標は65%

― 活発化したマーケティング活動の成果

木下 航空宇宙産業からの要求が非常に大きいのと、ティア2も含めたEVやハイブリッド関連での薄肉小物部品の加工が増えてきており、その高精度化への要求が大きい。
それらに伴って、自ずと開発要求もアイデアも数多く出ることから、一昨年、昨年ともに約50件の新製品を送り出すという良いサイクルを生み出している。新製品(5年以内の発売)については、売上高における比率は65%が最終目標で、常にそれをキープしたい。

― 5G時代に向けて

木下 5Gをはじめ、インダスストリー4・0やIoTなど含め、デジタル化、データ化は、やはり急速に進むだろう。一方では3Dプリンターが画期的な進歩を遂げているので、そこも含めたマーケティングが重要になる。今後、削り代(しろ)は減少していくので、仕上げ加工へのシフト強化など、すぐではないにせよ、そういった流れは注視していく。
工作機械にはセンサーが付いており、工具の抵抗や振動は感知できるので、デジタルといっても工具へのセンサー内蔵といった話はまた別として、工具の使用量やコストなど全てがデジタル化されることにより、タンガロイが常に提唱してきた「生産性工具」が正しかったということが明らかになってくるのではないか。

効率的な加工が「クリアにわかる」時代に

― 国内での「効率的な加工」の浸透具合

木下 本社・いわき工場へは、昨年は国内から1000人超、海外からも約600人と来訪者・見学者が訪れており、お客様から「効率的な加工をしたい」という要求が明確に出てくるようになった。その傾向は特に昨年、一昨年で加速しており、やっと日本国内に浸透してきた感がある。コスト競争や多忙によるアウトプット増が必要だったり、働き方改革による必要性など、全てが「効率的な加工」に回り始めているのではないか。
同時に、国内のお客様が「デジタル化」した考え方に変わってきているので、どんどんと新しい提案をしていきたい。そういう意味では「やりやすい」環境になってきている。在庫管理にしてもコストにしても、全てが数値で見られる時代になってきている中、ありがちな「過去の関係」だけではなく、「高価な工具でも使ってみればコストダウンにつながる」といったことが「クリアにわかる」時代になってきたということ。
繰り返しになるが、「コト」を売るのは、結果的にはお客様のメリットになる提案なので、「モノ」を売るための「コト」のサービスを高度化したい。

提案型・技術営業の成功者を横展開

― そんな時代の中で目指す「営業」スタイル

木下 タンガロイの中でもトップセールスが共通して行っている行動パターンがある。どうやってお客様に提案するか、お客様の痒いところを見つけるか、といった観点でこれを分析し、そこからお客様の課題を「予知」して、ソリューションを提案することに重きを置いている。本当の提案型営業、技術営業の成功者を横展開するような感じになると思う。

― 「分析して、予知する」・・・とはAIそのものような ?

木下 そうともいえるが、やはりそこに人間性を持たせていかなければならない。パターンにカッチリとはめるのではなく、それぞれの個性も含めて。併せて、新製品発売がさらに増えることも考慮し、タイムリーに技術教育を行い、工具メーカーとしてのハイレベルな提案営業、技術営業への転換を加速する。

「自動化投資は却下しない」

― 工場設備の投資状況

木下 一昨年以来、欠品や納期遅延といった大きな問題もなく推移できているのは、設備を頻繁に先行投資しているからであり、今年も継続していく。他社メーカーを見渡しても開発投資を加速しているが、その中でも先行し、もっと加速していきたい。特に「自動化投資に関しては却下しない」。増産投資は売れ行き次第の面もあるが、自動化投資は常に進めていけばよい。

― コンペティターの状況を見て

木下 中国の工具メーカーが力をつけてきている。業界としてはこれまで、先進国メーカー、日系メーカーによる切磋琢磨だったが、その中に中国サプライヤーが出現してきた形だ。大規模投資をしており、品質も向上していると感じる。

― 国内シェアの実感

木下 私自身はあまりシェアは気にしないのだが、「タンガロイのファンは増えている」実感がある。それは新しい提案をして、一度でも良い経験をした方が増えているということ。ヘンな言い方だが、シェアの増やし方にはいろいろな方法がある。だが、タンガロイの商品に魅力を感じていただけるお客様の数を少しでも増やしていくことが重要だと思う。